2026年4月16日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年4月16日

イラン戦争で見せた米国の「弱さ」

 柯文哲は、14年から22年まで台北市長を務め、その間、19年に台湾民衆党を創立、24年まで党首を務めた。24年の総統選に出馬し、約25%の票を獲得、同時に行われた立法院の選挙では台湾大衆党は8議席を得た。台湾政界に小さくない影響力を持ってきた柯文哲に対する有罪判決が、国際環境が悪化する中で下されたことの台湾政局への影響を解説したのが、上記の記事である。

 まず、イラン戦争のアジア方面への影響について少し詳しく見ておく。イラン戦争で米軍は4週間で850発のトマホーク長距離巡航ミサイルを使っており、在庫枯渇が戦争省内で懸念されていると報じられている。また、ミサイル防衛システム用のパトリオット、サードの在庫枯渇も深刻である。

 パトリオットミサイルは日本でライセンス生産されており、ライセンス元である米国への輸出は既存の武器輸出三原則の下でも可能で、既に米国からの要請でイラン戦争開始以降2度にわたり米国に輸出されたと報じられる。韓国への配備に際しあれほど中国との間で物議をかもしたTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)も、あっさりと中東に再配備された。

 さらに、装備品のみならず、軍隊自体についても、佐世保を拠点とする強襲揚陸艦トリポリが、沖縄に拠点を置く「第31海兵遠征部隊(31MEU)」を中心とした約2500人の海兵隊員を乗せて中東へ向かっている。この部隊は、イランの石油積出施設のあるカーグ島や、ホルムズ海峡周辺のイラン革命防衛隊の基地等への上陸・占領実施が想定されており、それが実際に行われれば、地上戦でもあり、イラン側の必死の抵抗で相当の死傷者を出す可能性がある。

 もう一つ無視できないのは、米軍の「弱さ」が露呈したことである。米軍はベネズエラで示したような最新鋭の電子戦を戦う高い能力はあるが、ウクライナ戦争で主流になった非対称戦・ドローン戦に対して、戦術的にも能力的にも十分適応できていない。そもそも、一機500万円前後の安価なドローンと一発5億円以上するミサイルとの戦争は割に合わず数の勝負で負けている。

 ホルムズ海峡封鎖は米軍に簡単に排除されるとみられてきたが、イランの地理的優位に基づく非対称戦に米軍は対応できていない。これは、中国に多くの学びを与えたことだろう。

 要するに、イラン戦争による軍事アセットの中東への再配備と露呈した米軍の限界により、アジア方面での米軍の抑止力は確実に低下している。


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