ちなみに、公式的な国際大会から排除されていながら、実はロシア代表はいまだにFIFAランキングの対象となっており、最新の順位は36位。弱小国に勝っているせいか、案外悪くないポジションだ。
上からのサッカー強国化
実は、かつてのソ連においては、ロシアよりもウクライナの方が濃密なサッカーどころであった。ロシアでは、アイスホッケーと人気が二分されるだけに、サッカー熱はそれほど高いわけではなかった。この構図は、今日もそれほど変わっていない。
もちろん、ロシアにもサッカー好きはいる。しかし、マニアほど、レベルの低い国内リーグには目を向けず、テレビでUEFAチャンピオンズリーグやイングランド・プレミアリーグばかり観るという傾向があった。
ロシア国内クラブも、ゼニト・サンクトペテルブルグや、モスクワの一連のビッグクラブは、一定のファン層を抱えている。それに対し、地方都市の住民が地元クラブを応援するという文化は、きわめて希薄だ。その一因は貧弱なスタジアムにあり、ワールドカップ前までは、観客席に屋根もない古びた陸上競技場が、国内リーグ戦の風景だった。
その上、日本などと違いスタジアムグルメやエンタメ企画もないので、とてもファミリー層やカップルが出かけたくなるような場所ではなかったのである。かくして、ロシアにおいては長らく、国内サッカーはごく限られたウルトラス(狂信的なファン)だけの関心事だったのだ。
こうした状況は、プーチン政権も問題視していた。そして、18年の自国開催ワールドカップを契機に、サッカー文化の大幅な底上げを図ろうとした。プーチン政権は17年に「ロシア連邦のサッカー発展戦略」を採択している。代表レベルでもクラブレベルでも、ロシア・サッカーの強化を図り、国威発揚に繋げようとしたのだ。
とはいえ、中国の例を見ても分かる通り、権威主義国家が上からの号令でサッカー強国化を図ろうとしても、上手く行くものではない。プーチン政権が実際にやったことといえば、ワールドカップに向けて世界基準のサッカー専用スタジアムを建設することだった。
国家主導のインフラ整備は、プーチン・ロシアのお家芸だ。ロシアはワールドカップ向けのスタジアム新設・改築のために、当時の為替レートで4000億円ほどを投じたとされる。
問題は大会後、それらのスタジアムが有効活用され、サッカー観戦文化が普及してきたかであろう。結論から言えば、その期待は今のところ裏切られたままである。
グラフは、ロシア国内サッカーの最高峰であるプレミアリーグ(全16チームで構成)における1試合当たりの平均観客動員数の推移を跡付けたものである(2025/26シーズンはまだ途中なので、4月時点の途中経過)。これを見ると、確かに18年ワールドカップに向けて完成した一連の新スタジアムが、コロナ前までは着実に観客を増やしていたであろうことが見て取れる。特に、人気クラブであるゼニト・サンクトペテルブルグの新スタジアム(6.8万人収容)が16年末に完成した効果が大きかった。
その後、ロシアでもコロナ禍が広がり、20年3月から厳しい入場制限が導入されたので、グラフに見るように、その時期に観客数が激減したのは、やむを得ないことであった。問題は、その後、段階的に規制が緩和され、22年3月には制限が完全撤廃されたのに、観客数がいまだにコロナ前の水準を回復できていないことであろう。これにはいくつかの要因がある。

