トランプの中間選挙対策
中間選挙は、大統領選挙と大統領選挙の間に行われるので中間選挙と呼ばれ、現職大統領の「通信簿」と言われている。しかし、今回の中間選挙は、トランプにとってそれ以上の意味を持つものだ。
というのは、仮に下院を落とせば、3回目の弾劾を受けるのは確実だろう。彼のプライドとレガシー(政治的功績)をかなり傷つけることになる。
さらに、民主党が上院で4議席上乗せできれば、共和党は多数派を失うことになり、トランプに対する弾劾裁判が行われる可能性は高まる。上院で3分の2以上の議員が賛成すれば、トランプは有罪になり、大統領職を罷免される。3分の2以上はハードルが高いが、共和党上院議員の中から造反者が出ることも予想される。
建国250年の間で、罷免された大統領は存在しない。ゆえに、トランプが最も恐れているのは、「弾劾」「有罪」「罷免」の流れができることである。
そこで、ヴィクトリアはトランプが中間選挙の対策を考えていると言う。
「イランとの戦争が中間選挙まで継続した場合、トランプは国家非常事態宣言をして、中間選挙を行わないかもしれません」
ヴィクトリアは、トランプが「国家非常事態宣言」という「切り札」を持っているとみている。
続けて、彼女はこう語った。
「トランプは選挙を国営化しようとしています」(国営化については『トランプの中間選挙にも影響する?日米首脳会談』参照)。
中間選挙では、2年ごとに連邦上院議員の3分の1(約35議席)と下院議員の全議席(435議席)が改選されるが、選挙管理は地方の権限である。ヴィクトリアは、トランプがその権限をとりあげようとしているのは、不正を行うためではないかみており、「国営化」に懐疑的である。
さらに、彼女は以下のように述べた。
「トランプは選挙で不正が行われていると言います。そこで、すべての有権者に、投票所で有効な自動車の免許証やパスポートの提示を求めています(SAVE America Act:法案の段階)。しかし、それにも意図があります。民主党を支持する低所得者のヒスパニック系や黒人の票を減らすためです。彼らは、自動車の免許証やパスポートを持っていません。食費にお金を使わなければならないのです」
余談だが、筆者が2012年の大統領選挙で、研究の一環として南部バージニア州フェアファックスにあったオバマ選挙対策事務所で戸別訪問を行っていたとき、バラク・オバマ大統領(当時)の選挙スタッフは、低所得者のヒスパニック系の有権者を投票所に車で連れて行った。
「トランプは、免許証とパスポートを所有していない場合、投票所で出生証明書の提出を求めています。大抵の女性は結婚すると姓を変えます。名前が一致しないので、投票できません。トランプは民主党支持の女性票も減らそうとしています」
民主・共和両党の支持者の性別割合をみると、民主党は共和党よりも女性支持者が多い。2020年米大統領選挙で、55%の女性がジョー・バイデン候補(当時)に投票したのに対して、44%がトランプを支持した。2024年大統領選挙では、53%の女性がカマラ・ハリス副大統領(当時)に投票した。トランプは46%であった。
しかも、今回の中間選挙においてはエプスタイン事件絡みで、共和党は女性票を減らすとみられている。トランプはその対策を考えているのだろう。
仮にトランプの選挙制度改革法案が米議会で通過すれば、法的に投票の権利がある有権者が事実上、投票できなくなるのだ。これは民主主義ではない。
「次の中間選挙は、トランプが不正をしなければ民主党が勝ちます」
ヴィクトリアは、こう言って締めくくった。
彼女の見立てによれば、物価高、エプスタイン文書およびイラン戦争といった圧倒的に不利な材料があっても、トランプが不正をして共和党が勝つ可能性があるということだ。
