2026年5月27日(水)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2026年5月27日

 最重要課題の半導体も、現在の技術的後進性を覚悟の上で、将来的にアメリカを凌駕するための自主開発に舵を切っており、すでにアメリカは半導体という切り札を失っていた。

 こうした中で中国は、トランプが必要とするものをその場で直接与えず、その上で「習近平によって、対等な大国同士の、新しい関係が開始された」という「偉業」を創作し、世界に向け印象付けることに専心できた。歴代皇帝が天地を結んで治世平穏と五穀豊穣を祈った「天壇」を見せ、高低差のある奇妙な椅子にトランプを座らせて自らの堂々たる姿と対比させ、あるいは自らが掌握する中国最高権力の場「中南海」に招く、といった仕掛け。すべては、中国が見せたい「新しい中米関係」を演出する舞台装置であった。

トランプの浅慮が招く台湾危機

 今回の重要焦点の一つは台湾問題であった。習は14日の会談で、「台湾問題は中米関係の最重要課題」「適切に処理できなければ衝突となり、非常に危険な状況に追い込む」とトランプを強く牽制した上で、おそらくは経済・貿易と絡めた取引を持ちかけた。

 この影響を受けてか、トランプは帰国途中から「台湾の独立を望まない」「(台湾のため)アメリカ軍の長距離移動を望まない」と述べ、「台湾関係法」で義務化されている台湾への武器売却も、「中国の出方次第」「非常によい交渉材料」と述べた。さらに「台湾が米国の半導体産業を長年盗んできた」「台湾の半導体メーカーが米国に来ればいい」と放言した。

 だが一連の軽率な発言は、台湾をめぐるアメリカの根本姿勢を変化させてしまう、危険な2つの火種を蒔いた。

 一つは、従来の「台湾への攻撃は容認しないが、アメリカの介入有無も明言しない」という「戦略的曖昧性」を保ちつつ、しかしアメリカは確実に台湾に関与するという信頼性が、根底から揺らいだ点である。トランプは中国との「ディール」次第で台湾を見離しかねない、という疑念を生じさせた。

 むしろ中国には、その疑念と動揺を生じさせる狙いがあった。ルビオ国務長官やグリア米通商代表部(USTR)代表は、政策変更はないと強調したが、ある政権高官は「台湾問題が今後5年で交渉される可能性が高まった」と発言している。

 もう一つは、トランプが「台湾独立」という中国のレトリックにからめとられている懸念である。中国は自らが望む「統一促進」を、台湾の「独立反対」という言葉にすり替え、現状維持を望む台湾の存在自体を、意図的に「独立志向」であるかのように位置付け、あらゆる機会に台湾を牽制・攻撃する名目としている。ゆえにトランプが「ディール」に目を奪われ、中国と同じレトリックを唱和することは、台湾の存立自体を危うくするものである。


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