2026年6月5日(金)

日本主導で平和の再構築を

2026年6月5日

答えのない問いに
私たちができること

 世界では今なお、戦争や紛争が続いている。目黒氏は、「ロジック」、すなわち共有された基準が重要になると指摘する。

「何が許され、何が許されないのか。その基準をあらかじめ持っていなければなりません。基準があるからこそ、行き過ぎそうになった時に立ち止まることができるのです」

 ただし、立場や価値観の異なる国家同士で基準を共有するのは容易ではない。CSWの場でも、各国の主張が激しく対立することは少なくなかった。

 「『日本代表』として発言する以上、自由に自分の意見だけを言うことはできませんでした。ただ、会議室の外では本音で議論を重ね、折衷案を探っていく。ネゴシエーションとは、そういう積み重ねなのです」

 また、目黒氏は仮に基準が破られた時には、それを決して見過ごしてはならないと断言する。

 「違反は違反として指摘する。その前提が崩れれば、ネゴシエーション自体が成立しなくなります」

 今後、AIの進展により、他者の「ロジック」は、「理屈」として切り捨てられてしまうのではないかという危機感もある。だが、目黒氏は「未来には、明かりがある」と言い切る。

 「今はインターネットを通じて、国境を越えた多様な価値観に触れられます。若い世代には様々な経験を通じて〝考えられる〟ことを楽しんでほしい。日常の中で違和感を覚えた時に、それを見過ごさず、『なぜそうなっているのか』を考える。その積み重ねが、社会のあり方を問い直すことにつながります。

 誰かがやってくれると思っている限り、社会は変わりません。WPSをより浸透させるために『誰が』アクセルを踏むべきか、と問われることもありますが、その発想自体が違います。『誰か』ではなく、自分がどうするか、です」

 こうした姿勢は、「平和」という言葉の捉え方にも通じる。

 「かつてアメリカの友人に『平和』とはどういう時に使う言葉か問われ、『戦争をしていない時』と答えると『違う』と言われました。たしかに、撃ち合いをしていないからといって『平和』とは限らず、状況や規模によっても捉え方は全く異なります。私自身、平和とは何か、今でも考え続けています」

 誰かが定義した「平和」に従うのではなく、自分で考え、あらゆる視点から問い直し続ける。その営みこそが、平和を支える土台となるのではないだろうか。

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Wedge 2026年6月号より
国際秩序、瓦解の危機 日本主導で平和の再構築を
国際秩序、瓦解の危機 日本主導で平和の再構築を

ある写真集を手元に置き、時折ページをめくりながら、この原稿を書いている。『ヘルソン―ミサイルの降る夜に』(f/8)─。フォトジャーナリスト・佐々木康氏がロシアの侵攻下にあるウクライナへ二度赴き、撮影した作品だ。 佐々木氏は4月下旬、取材で知り合ったウクライナの兵士に「平和とは何か」を尋ねたところ、こう返されたという。「戦争の間の一時的な休息だ」 さらに、兵士はこう語った。「私たちの本性は、人間が絶えず平和に暮らすことを許さなかった。戦争は繰り返し起こる。私たちの世代は、第二次世界大戦後の長い(あるいは短い)平和な時代を生きることができて幸せだった。今、その時代は終わりを迎えようとしている」 誰しも、この言葉を信じたくはない。だが、この世界から戦争をなくすことがいかに困難であるかも分かっている。そうした〝大いなる矛盾〟の中で、私たちは現下の情勢をどう受け止め、どう考えるべきなのか。そして、日本(日本人)は何ができるのか─。


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