2026年6月9日(火)

World Energy Watch

2026年6月9日

 AEMOは、確約済みの北・南間輸送能力の増強計画を織り込んでも、南部の生産減少により、29年以降、冬季ピーク需要時において供給不足が生じるリスクがあると指摘している。

対策と日本への影響

 東部のガス不足に対応するため、オーストラリア連邦政府は浮体式LNG貯蔵・再ガス化設備(FSRU)の整備を進めている。これらの施設が整備されれば、国外や西オーストラリア州などで生産されたLNGを東部へ輸送・供給することが可能となり、冬季を中心とするピーク時のガス需要への対応力が高まると期待される。

 さらに、オーストラリア連邦政府は、国内市場への天然ガス供給を優先する政策を強化している。26年5月に国内ガス留保制度の導入方針を発表した。同制度は27年7月からの開始を予定しており、LNG輸出事業者に対し、年間LNG輸出量の20%に相当する天然ガスを国内市場へ供給する義務を課すものである。

 ボーウェン・エネルギー相は、この制度について、国益を重視しつつ慎重に設計した措置であるとの考えを示し、国内市場に「緩やかな供給過剰」を生み出すことで、ガス価格の引き下げを図る狙いを説明した。

 国内のガス価格高騰や供給不足への対策としては、西オーストラリア州が先行している。同州では06年から「西オーストラリア州国内ガス政策」を実施しており、沖合LNG輸出プロジェクトに対し、LNG輸出量の15%に相当するガスを州内市場向けに確保し、供給可能な状態にすることを求めている。

 国内ガス留保制度が、日本企業の参画するLNG事業や既存の長期LNG売買契約に及ぼす影響は、現時点では限定的とみられる。制度案では25年12月22日以前に締結された既存契約への配慮が示されており、日本企業が締結済みの長期契約に基づくLNG供給が直ちに削減される可能性は低い。特に、日本企業は西オーストラリア州やノーザンテリトリー準州の事業からの調達比率が高く、東海岸のLNG事業を主眼とする制度の直接的影響は相対的に小さい。

 もっとも、既存契約が完全に適用除外されるわけではない。LNG輸出事業者は27年7月以降、輸出量の20%相当を国内市場に供給する義務を負い、追加供給の確保やLNG輸入、輸出量の調整、特例申請などを求められる可能性がある。また25年12月22日以降の契約更新や延長は既存契約として扱われない懸念もあるため、中長期的には新規調達条件や契約更改の不確実性が高まるだろう。

 日本としては、オーストラリア国内でガス需給の逼迫やエネルギー価格の上昇に対する懸念が強まっていることに十分配慮する必要がある。その上で、長年にわたり築かれてきた二国間の信頼関係や、石炭・LNG分野における協力実績を改めて強調し、日本向けエネルギー供給の安定性の確保を継続的に働きかけていくことが重要である。

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