異様な展示
異様な展示も行われた。ロシアが侵攻し、一方的に〝国家〟だと認めたウクライナ東部ドンバス地方の二州を、ロシアの新たな共和国として紹介していたことだ。
フォーラムのホームページは、このように紹介していた。
ドネツク州の占領地域は〝ドネツク人民共和国〟との名称で、「工業地域であり、観光面でも潜在性がある。資源が豊かで、人的な資本も豊富だ。共和国は今、インフラの再建に取り組んでおり、生産設備の近代化を進めている。それゆえに、投資の受け入れや大型開発も可能だ」「人民共和国は、自由貿易地域、ビジネス優遇策、工業・農業分野での特別な支援を受けることも可能だ」などと主張した。
同様に、ルハンスク州も〝ルガンスク人民共和国〟として、「展示は共和国の経済、工業、文化的潜在力を強調している。地域の工業、鉄鋼業、農業、そして文化的特性は、この地に居住し、投資し、ビジネスを展開することへの魅力を示している」などと紹介されている。
両州はロシアが侵攻し、一方的に占領下に置いたウクライナの地域であり、そのような地に投資をする海外企業など皆無だ。そのような地域に投資を行えば、国際的な制裁対象にもなりかねない。
それでもロシアがこのような展示を行う狙いは、実効支配を誇示して、両州がロシアのものであると既成事実化する思惑がある。プロパガンダであり、その対象は海外というより、むしろロシア国内において〝これらの地域はウクライナ政府に虐げられ、自ら願ってロシアに加入した〟とロシア国内向けに主張することが主眼にあるといえる。
中国の存在感
一方で、今回のフォーラムで強い印象をロシア側に与えたのが中国であることは間違いない。中国は、韓正国家副主席が出席したが、ロシアは現在、中国との貿易が全体の35%を占めているとされる。
フォーラムの開催直後にドイツのキール世界経済研究所が発表した内容によれば、ウクライナ侵攻開始以降、ロシアに流入した西側の制裁対象となっている軍事物資の増大量の4分の3は中国からの輸入によるものだという。
中国が経済、軍事両面でロシアを支援している実態が浮き彫りになっており、「ロシアに対する西側の制裁効果を抑制している一方、両国間の貿易、金融、工業製品のサプライチェーンにおいて、中国が主導する力がさらに増している」という。
ただ、中国との間においては焦点のガスパイプライン建設計画をめぐり、依然として合意が得られておらず、今回のフォーラムでも目立った発表はなかった。
フォーラム開催初日には、サンクトペテルブルク郊外へのウクライナのドローンによる大規模な攻撃が起きた。さらに6月下旬には、モスクワ郊外も攻撃を受けるなど、これまで徴兵面でも優遇されてきた大都市の住民にも、戦争の気配が確実に感じられるようになっている。
そのような中で、成果も見えない経済フォーラムの開催によって、ロシア国民が自国経済に安心感を得られることはまず考えられない。
