2026年7月27日(月)

オトナの教養 週末の一冊

2026年7月27日

「日本」という国の誕生を目撃する場所

 飛鳥時代とは、豪族連合的な政権が中央集権国家へと脱皮していく激動の時代だった。「天皇」という称号が用いられ始めたのも、「日本」という国号が公的に定着したのも、この時代――とりわけ7世紀末から8世紀初頭のことである。

 710(和銅3)年の平城京遷都にあたり、元明天皇は「飛鳥の里をあとにしてしまったら、あなたがいるあたりも見えなくなってしまうのでしょうか」と詠んだ。飛鳥はすでに奈良時代において、日本の「ふるさと」として宮廷人の胸に刻まれていたのだ。

 世界遺産登録により、その記憶はいよいよ世界共通の財産となった。現地を訪れれば、飛鳥川が流れる山里の風景の中に、国家誕生の息吹を感じることができるだろう。

世界遺産登録を機に、古代史の核心がよみがえる

 飛鳥・藤原は、政治・宗教・文化のすべてにおいて、日本という国家の原型が凝縮された地だ。2026年7月の世界遺産登録は、単なる「観光振興」ではなく、この地が持つ歴史的価値が国際社会に認められた瞬間である。

 その全貌を体系的に知りたいなら、歴史学者・瀧音能之氏が編者を務める『飛鳥・藤原に隠された古代宮都の謎』が格好の案内役となる。飛鳥の宮都がなぜそこに築かれたのか、古墳と寺院が共存する意味とは何か、藤原京はいかにして誕生したのか――現地を訪れる前に、あるいは訪れた後に、手に取る価値がある一冊だ。

飛鳥・藤原に隠された古代宮都の謎
瀧音能之 編、古川順弘 著 
¥1,760円(税込)

 

 

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