2026年7月8日(水)

教養としての中東情勢

2026年7月8日

ホルムズ海峡支配をあらためて誇示

 こうした内政の権力闘争を抱えるイランだが、ホルムズ海峡の支配権を死守のためなら「対米交渉を反故にするリスクも犯す」ことが6月下旬の一連の攻撃の連鎖で浮き彫りなった。発端はイランが6月25日、海峡を通過するシンガポール船籍の貨物船を無人機などで攻撃したことだ。

 これに米国が反応、26、27日の両日にイランの無人機貯蔵施設などを爆撃し、イランもバーレーンとクウエートの米軍基地に報復したと発表した。その後双方が自制して本格的な交戦にいたらずに終わったが、あらためてイランのホルムズ海峡支配への固執が印象付けられた。

 今回のイラン側の貨物船攻撃には伏線がある。やはりホルムズ海峡に面するオマーンと国連の国際海事機関が攻撃の直前、オマーン領海を通る海峡の「新ルート」を設定しようとする動きを見せていた。イランにしてみれば、将来的に「サービス料」を徴収しようと計画しているだけに、イランの思惑を台無しにするような試みは許さないことを断固示す必要があった。

米国とイスラエルにもズレ

 米側もイランとの交渉を継続するためにイスラエルの暗殺計画を抑える必要があった。米紙などによると、イスラエルに狙われていたのはイランの交渉代表のガリバフ国会議長とアラグチ外相だ。米国は3月、イスラエルが2人の暗殺を計画していることを察知し、仲介役の第3国を通してイランに警告した。

 暗殺により停戦交渉がストップするのを恐れたためだ。当時トランプ政権は早期の収拾を望んでいたが、イスラエルはあくまでイラン政権の転覆を目指し、要人の暗殺に固執していた。

 この頃から両者の戦争目的に大きなズレが生じ始めていた。特に暗殺の危機が高まったのはパキスタンで開催された4月の和平協議の時だった。

 イラン側の代表団70人を乗せた航空機はパキスタン空軍の戦闘機に護衛されイスラマバードに到着した。問題は協議が終わった後のイランへの帰途だった。

 イスラエル軍戦闘機2機がイラン領空を侵犯、イラン航空機は急きょ、マシャドに緊急着陸した。代表団は陸路8時間かけてテヘランまで戻ったという。ガリバフ国会議長は昨年の12日間戦争の際にも、イスラエルに爆撃されたがれきの下から救出されている。

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