英国が鳴らす日本への警鐘
今こそ求められる政治とは
言うまでもないが、日本政治の状況は英国とはかなり異なる。日本はカナダと並んで、つい最近まで先進民主主義国の中でもポピュリズム勢力の台頭がみられない国だとされてきた。EUのような、わかりやすい外部の標的もない。
しかし外国人労働者の受け入れや、世代間格差、社会保障制度の持続可能性などをめぐって、人々の不満や価値観の違いが着実に広がっていることを鑑みれば、英国の混乱は決して遠い国の出来事ではない。
自民党政権は、これまでも英国から多くを学んできた。日本での一般的なサッチャー像は、構造改革を進めた小泉純一郎元首相に近いように思われる。しかしサッチャー政権には、資産価格の上昇を促し、賃金の伸び悩みへの不満を抑えた点において、「アベノミクス」を掲げた安倍晋三元首相との共通点もある。高市早苗首相は尊敬する人物として、サッチャー首相と安倍首相の2人を挙げているが、バブル経済の発生を避けるためにも慎重な舵取りを行うことが、まずは求められよう。
高市首相の政権運営で気がかりなのは、日本が抱える問題に正面から向き合うよりも、有権者の共感を得られるメッセージを発することが優先されているように思われることである。「円安ホクホク」発言はその最たるものと言えるだろう。
民主政治にとって重要なのは、社会の中には様々な立場が存在することに正面から向き合った上で、なるべく公正な解決策を考案することである。
移民や外国人に責任をなすりつけるポピュリズムは、国内においてグローバル化の便益が不平等に配分され、格差を拡大させる一方、財政赤字や年金の世代間格差を通じて高齢世代が若年世代に負担を押しつけているという現実から、目を背けさせるものでしかない。支持率の高い政権だからこそ、問題の先送りは避けるべきである。
財政や社会保障制度の改革に踏み込み、多様な立場の人々が納得できる公平さを追求してこそ、本当の意味での社会的連帯に支えられた、安定的な政治が実現するのではないだろうか。
