ウナギの持続可能な利用のために
残念ながら現状では、自主規制とは言え、これを大幅に超えた中国産のウナギ加工品が大手を振って市場に流通しており、何の規制もなされていない。香港から輸入された稚ウナギについても、チェックされることなく日本に輸入されている。
ではどうすべきか。第一は、東アジアでの地域的な対応である。まずは日中韓台非公式協議の場あるいは二国間協議の場において、中国側に規制の遵守を強く求めなければならない。加えて、規制を法的拘束力があるもの(国際協定など)とすべきである。
第二が、国内法による手当である。現在わが国では水産物のトレーサビリティを担保するための「水産流通適正化法」が既に制定されている。
ウナギおよびウナギ加工品を同法に基づく適法に採捕されたものとする証明書の添付を義務付ける「特定第二種水産動植物」に指定する。これにより、香港経由の密輸ウナギを抑止する手段が得られる。
中国からの自主規制超えウナギについては、①自主規制を法的拘束力を有するものにする、②自主規制を遵守した稚ウナギ由来であることを示す証明書の添付を求める、③自主規制も明確に適用範囲とする法改正する、のいずれかによって手当てすればよいのではないか。
第三が、多国間の場での対応である。ワシントン条約締約国会議では附属書掲載提案は否決されたものの、締約国にウナギの取引に関する対策強化を求める決議が日本も含めコンセンサスで採択されており、締約国会議および下部委員会で検討されている。この場でウナギの違法取引や不適正な取引に関する現状を説明して、対策強化を図るべきである。
ニホンウナギは日本政府によりレッドリストに掲載され、絶滅危惧種に指定されている。この点からもワシントン条約でのウナギに関する対応は矛盾していると言わざるを得ない。
「忖度する科学」を超えて
最後に付言したいのが、研究者コミュニティの対応である。科学は政治からは独立した立場を保ち、政治によって科学が歪められるべきではないだろう。加えて、研究者コミュニティは議論の透明性と自己修正に開かれていなければならない。
「ウナギは増えている」論文を掲載した日本水産学会の学会誌に、その論文の方法論と結論を再検討する論文を投稿したところ、手続的な理由で門前払いされたとのことである(海部(2026))。生態学者の鷲谷いづみ氏はこれら一連のウナギを巡る問題を振り返り、「水産業という経済に密着する応用科学が政治からの独立性を確保する難しさを示している」と述べているが、筆者も全く同感である。
科学が政治へ迎合しているように見えること、「忖度する科学」と見えることは、当該分野の科学的な威信を傷つけこそすれ、高めることには決してなり得ないであろう。「忖度する科学」は、超えられなければならない。
