2024年12月8日(日)

田部康喜のTV読本

2014年8月20日

 1954年3月1日、太平洋のビキニ環礁で、広島型原爆の1000倍の破壊力をもった水爆実験が行われた。米国が前年にソビエトが成功したのに追いつこうとしたのである。

 実験地から150キロ圏内で操業していた、第五福竜丸が被ばくした悲劇は広く知られている。乗組員23人の全員が被ばくし、無線長の久保山愛吉さんが急性の原爆症によって亡くなった。

歴史の新たな事実を掘り起こした調査報道

 NHKスペシャル「水爆実験 60年目の真実」(8月6日)は、ビキニ環礁の水爆実験によって、第五福竜丸のみならず100隻近い漁船が被ばくした可能性を明らかにした。

 これまで、なぜこうした重要な事実が隠されてきたのか。番組はその深層にも迫った。

 歴史の新たな事実を掘り起こした、調査報道の力作である。

 広島の原爆症に取り組んできた科学者たちがその真相を明らかにした。さらに取材陣は米国や日本の公文書を情報公開の手続きで手に入れて、科学者たちとともに水爆実験の影響を探っていく。

 調査チームは昨年4月にスタートした。放射線物理学の権威である広島大学名誉教授の星正治さんと、統計学の専門家である同大教授の大瀧慈さん、血液学の田中公夫さん。そしてこのプロジェクトのきっかけとなる漁船員の追跡調査を行っていた、元高校教師の山下正寿さんである。

 「ヒロシマ」の悲劇を追究してきた科学者たちが、ビキニの水爆に挑むことになった。


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