2026年10月21日(水)

Wedge REPORT

2026年10月21日

 ところで怪我の功名だったのは、針広混交林が立木の競争入札で比較的高く落札されることだ。目利きの素材生産業者に言わせれば、混交林では針葉樹の成長が悪いため、木目が細かく、枝が落ちていて無節材が多いというのだ。

 九州でも青森でも同じことを聞いたから、全国どこでも同じだろう。特に国有林は手入れが悪いからうま味があると、業者は嗤(わら)いながら言った。

 以来、筆者はできるだけ手抜きをするのが、森林施業の極意だと思うようになった。下手な除伐や間伐に高いコストをかけて、残存木を傷だらけにするより、侵入してきた広葉樹も共存させて見た目は悪い林であっても、製材してみれば品質の高い木材を生産することができる。同時に多様な広葉樹も用途に応じてしっかり仕分けして、専門の木工業者向けに販売するのだ。これがある種理想の林業ではないか。

 それでは、平成7年度森林・林業白書で高らかに歌い上げる再造林への代替策について述べるとしよう。

従自然林業

 最も大事なことは、小理屈を言って無駄に人手をかけることなく、しっかり自然に従うことである。

 林業も生産業である限り、低コストが重要である。日本の自然の豊かさ、自然力の強さを存分に森林育成に取り込み、発揮させることである。

写真 3 手前下刈実施、奥と柵外天然更新

 ところがこれがまったくできていない。逆にこのような自然に真っ向から対立してきたのが、これまでの日本林業なのだ。

 広大な皆伐面を相手に、苗木を植えて寒風や日射に晒し、旺盛に繁茂してくる草や灌木から幼木を刈り出し(下刈)、つるを切り、植栽木を追い越そうとする侵入木を除伐する。下草もつるも広葉樹も自然の回復力の証なのだが、林業者には邪魔ものとしか映らない。

 まあそれにも一理ある。林木は建築用材として重要であるから、まず直材であることが1番の要件なのだから。しかし、未来永劫その要件が1番とは限らない。現下のスギ、ヒノキなどの針葉樹材の価格低迷は、これまでの造林投資を回収できないばかりか、再造林への意欲を大きく減退させている。

 なのに強力な自然力に対抗して、どこまで針葉樹造林を続ける気なのか。旺盛に繁茂してくる広葉樹をそのまま自由に伸ばしてやるのが、素直な考え方というものであろう。

写真 4 皆伐面での旺盛な植生回復

 逆転の発想とも言えるが、もともと針葉樹造林の方が反自然的であったのだ。これからは従自然でコストダウンを徹底すべきである。

 そうは言っても、長らく脳裏に焼き付いた、いや半ば遺伝子に組み込まれたと言ってもよいぐらいの林業人の針葉樹造林に対するこだわりを簡単に払拭することはできないだろう。そういう人たちは、すぐに天然更新による広葉樹林造成の欠点に言及する。

 筆者は、個々の林業人が従来型の針葉樹造林を行うことについては問題視していない。林業経営はそれぞれの経営者の自由であるからだ。将来の得損は自己責任である。

 しかし、行政が経営意欲に関心のない森林所有者たちを不明確な将来へ導くことは許されない。単に林業界を窮地に立たせるだけではなく、血税の無駄遣いになるからだ。実績から見ても実効性があるとは思えない再造林を推奨するのは無責任である。


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