適時適伐の柔軟な森林施業
先ほどもちょっと述べた直材信仰であるが、過去の日本人の発想はもっと柔軟だった。写真5のような重曲材でも見事に使いこなしている。また多様な樹種を利用している。現代人には到底思いつかない感覚で、頭の中まで直材になってしまっているのだ。
一見すれば重曲材や暴れ木だらけの森林であっても、立体的な画像処理を行ってAIにかければ、それらの木材を使ってどのような建物ができるか具体的に提案できるようになるだろう。技術革新へ期待は無限である。
広葉樹造林はいいが、天然更新は嫌いだという向きも多い。筆者の理想とする天然更新は、皆伐面に人手を加えず自然のままに、埋土種子や散布された種子の発芽や萌芽により多様な樹種を導入できるのである。
それぞれの樹種は適地でしか更新・成長できないので、究極の適地適木が自ずと実現される。微妙に変化する林地の環境に適した樹種が成育すれば、自然的外圧に強い森林となる。
しかし、行政はこれを揶揄して放置と呼び、単純かつ硬直的で環境変化に対応しにくい人工更新を推奨する。行政的技術は、そのような不作為が大嫌いで、人為を介入させることによって予算確保の裏付けとしたがる習性があるのだ。
しかし、放置にはそれなりの理由がある。同じ樹種であれば、植栽木より天然木の方が圧倒的に素性がよいし、更新密度が高くなる。本数密度が高ければ、広葉樹の最大の欠点である側枝の多さや樹冠の広がりが制限されて、樹幹が通直になりやすい(写真7)。天然更新の場合は、一般的には1ヘクタールで優に3000本を超える稚樹が発生する。
広葉樹造林は、下刈時に侵入してきた自然植生との区別がつかず、誤伐されるケースが高い。誤伐されても枯れずに復活するが、幹が箒状(ほうきじょう)に分かれてしまい直幹ができにくくなる。
広葉樹造林では目的樹種が明らかであるが、天然更新の場合は多樹種が混在し、しかも成林する過程で、構成樹種が交わることが多い。すなわち初期にはアカメガシワ、ヌルデ、ハゼなどパイオニア種(まず裸地に侵入する先駆種)が多いが、その後は高木性の樹種に移行する。また、暖温帯では当初はコナラなどの落葉広葉樹が優占するが、次第にシイ・カシ類などの常緑広葉樹が優勢になってくる。
このような時間の経過による森林の内容の変化を観察しながら、適時適伐で有用で価値のある樹木を収穫できれば、環境保持的で低コストな理想の森林施業が実現できるのである。
くれぐれも薄利多売で環境破壊的な大規模林業を目指してはならない。
ここまでは、行政が推進したがっている皆伐再造林に対する皆伐天然更新の提案だった。その前段となる皆伐への反対はもちろんあるのだが、それは別途述べることとして、次回にはさまざまな天然更新について紹介することにしよう。
