2026年10月27日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年10月27日

 このためMI5は、今後、中国の研究機関と協力する英国の大学や研究者に対し、単に直接の相手方が誰であるかだけでなく、研究資金の究極的な資金源まで確認するよう求めている。英国政府は大学の学長らに対し、CGTRIとの現在または将来予定されている協力関係をただちに点検し、関係を打ち切るよう促している。

 MI5も、大学や研究機関が今後CGTRIを最終的な資金源とする研究に関与し続ければ、23年国家安全保障法に基づく法的問題につながる可能性があると警告している。

 今回強調されるのは、英国が中国による諜報活動について、個別の事件を静かに処理するのではなく、社会全体にその危険性を公然と知らせたことである。近年、英国その他諸国では、中国機関等が専門家のネットワークや求人ネット等を利用して、安全保障関係者や専門家に接触しているとの警告も出ており、今回のMI5の発表はその延長線上にある。

 MI5は今後、研究者個人だけでなく、資金の出所、研究機関の背後関係、研究成果の最終的な利用者まで含め安全保障上のリスクを評価することを求めている。

 これは英国における対中政策が、伝統的な防諜から、大学・科学技術・研究資金を含む「研究安全保障(research security)」へと対象を拡大していることを示す重要な事例といえる。

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日本への5つの警鐘

 この記事は日本に対しても重大な警鐘を発している。第一に、「研究安全保障」を防衛・経済安全保障の中心課題の一角として扱わなければならないことである。

 日本でも既に経済安全保障推進法、重要経済安保情報保護制度、技術流出防止のための大学向け輸出管理指針が整備され始めた。政府も AI、量子等を重要技術として研究開発を推進するとともに、26年度から競争的研究資金について研究安全保障・研究統合を確保する方針を示している。

 しかし、今回の英国の事例が示すところは、直接的な技術移転だけでなく、研究資金の最終的な出所、研究機関の背後関係、研究成果の最終利用者までを慎重に確認する必要があるという警鐘である。

 第二に、日本政府としては大学や企業に個別の警戒を呼びかけるだけでは不十分であろうという警鐘である。内閣官房を中心に、内閣府、文部科学省、経済産業省、防衛省、警察・情報機関が連携し、研究安全保障に関する国家的な情報共有システムを構築する必要がある。

 大学が外国研究機関との共同研究を審査する際、相手方の資金源、関連企業・政府機関、軍事・情報機関との関係、過去の技術移転実績等を確認できるデータベースを政府が整備し、大学だけの判断では不十分であるとの認識に立った対応が必要である。


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