2026年10月27日(火)

Wedge OPINION

2026年10月27日

 この戦争による死傷者数は、ロシア側が約140万人、ウクライナ側は約53万~63万人とされる。数としてはロシアが圧倒的だが、国土や人口規模を考えるとウクライナ側の被害も大きい。そこで、ウクライナ軍が進めているのは「自動化・無人化」へのシフトだ。

「共にいれば、私たちは決して打ち砕かれることはない」兵士募集の宣伝

戦争と日常の境界は曖昧に

 今、ロシア軍に近いヘルソン市や北部ハルキウ、ザポリージャなど最前線から50キロ圏内では、飛来する自爆ドローンに備え、人や車が通る道路上にトンネルのようにネットが張られている。

ドローン対策用のネットを道路に施工する工兵

 「移動で姿を晒すとロシアのドローンに狙われるので、今は地下や建物の中に潜って姿を見せず、極力、遠隔で攻撃を続けています。一方で、戦争が4年半にもなり、『戦争疲れ』の雰囲気も感じられました」

 約7年間ウクライナ軍兵士として戦った「ディマ」という男性は、25年3月に娘が生まれた時に帰宅し、それ以来、部隊には戻らなかった。「無許可離隊」、いわゆる脱走状態である。ディマは佐々木氏にこう語ったという。

 「私には、もうやり続ける力がなかった。『国の敵』になってしまった……」

 日常の中に戦地があり、戦地の中に日常がある──。平和な世を生きる現代の日本人には分かりにくい感覚である。

 戦争はどこまで日常に入り込むのか、そして、人々はどのようにしてその現実を受け止め、そこに暮らし続けるのか。

 『20−50』は、ドローンによって拡張された新しい戦場の距離であると同時に、戦争と日常の境界が曖昧になっていく現在のウクライナを見つめるための距離でもある。

 ドローンなどによって日常へと侵食していく戦争──。

 私たちが平和の再構築を模索する上で、佐々木氏がレンズ越しに捉えた「20−50」の現実は、遠い国の出来事として片付けられない〝重い問い〟を私たち日本人に突きつけている。

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Wedge 2026年11月号より
ニヒリズムを超えて 巨大災害時代を生き抜く
ニヒリズムを超えて 巨大災害時代を生き抜く

東日本大震災から15年の月日が流れた2026年。7月には令和8年熊本地震が発生し、千葉県では複数回にわたって浸水被害が起きた。日本において自然災害の危険性は尽きないどころか、甚大な被害をもたらす都市型水害など新たな脅威にも向き合っていかなければならない時代になった。巨大災害を前にして人間は無力である。だからといって、ただ茫然自失として待つだけでよいのか。事前の備えに100%はない。それでも、自分たちができる最善の対策を行い、諦めることなく「減災」の思考を持ち続けるべきだろう。巨大災害時代を生き抜くために変えるべきこと、守るべきことを改めて考えたい。


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