欧州市場で米クラウド大手や「ネオクラウド」が台頭
そうした欧州のデータセンター需要を押し上げているのが米ハイバースケーラーの欧州進出と「NeoCloud(ネオクラウド)」と呼ばれる新興データセンター事業者の台頭だ。「年間の設備投資額は業界全体で1000億ドル規模だったが、今や1兆ドルを超えるようになった」とレッドパス氏は指摘する。
ネオクラウドは仮想通貨のマイニングなどから生まれた事業者で、最近はAI需要の拡大に目をつけ、GPU(画像処理半導体)データセンターの建設を推進している。その背後にいるのがGPU世界最大手の米NVIDIA(エヌビディア)で、GPUの販路拡大に向け、そうしたネオクラウドに多額の資金を提供しているからだ。
欧州では「FLAP-D(フラップ・ディー)」と呼ばれる、フランクフルト、ロンドン、アムステルダム、パリ、ダブリンの5都市がデータセンターの拠点として知られるが、その稼働容量は2019年の1.8ギガワットから26年には3.8ギガワットへと2倍に拡大した。各都市のデータセンターの空き容量は7%前後まで下がり、「フランクフルトに至ってはわずか3.1%しか残っていない」とグローブ氏は警鐘を鳴らす。
欧州のデータセンター建設計画「CADA」が始動
さらに深刻な問題は欧州連合(EU)系のデータセンター事業者のシェアが17年の29%から22年には15%へと半減したことである。欧州委員会もこうした事態を問題とし、厳しい個人情報保護を求める「GDPR(一般データ保護規則)」のような守りのデジタル政策を転換し、米国勢に負けないようにと今年6月に「CADA(クラウド・AI開発法案)」というデータセンターの設置拡大戦略を発表した。
CADAの計画によると、5~7年の間にEUのデータセンターの計算容量を3倍に増やす考えで、データセンターの迅速な建設を促せるように認可手続きの簡素化策などを打ち出した。というのも欧州にはEU27カ国のほか、英国もあり、それぞれの国が裁量権を持っていることから、データセンターの建設認可が下りるのに以前は1年程度だったのが、現在は5年近くにも長引いているためだ。
大規模なデータセンターの建設には広大な土地や電力施設などが必要で、地元住民にも建設反対運動がある。そこで米国勢と戦うための秘策として注目されたのがデータセンターの分散化を可能にするIOWNの技術だ。
