なぜ「生鮮」はダメか
シストは微小な土壌粒子と見分けがつきにくく、ジャガイモ表面の凹凸や芽のくぼみに入り込むと、通常の水洗浄だけで完全に除去することは難しい。外見上はきれいに見えてもシストが付着している可能性を完全に排除できないのだ。
そのため加工用の輸入では、港湾から内陸の指定加工工場まで密閉コンテナで直接輸送され、工場到着後は直ちに高温で油揚げ加工される。剝いた皮や加工残渣も厳重に加熱・廃棄処分するなど、病害虫が外部の土壌へ漏れ出さない徹底した管理が義務づけられてきた。
だが、スーパーなどを通じて消費者に直接届く生鮮ジャガイモでは、こうした封じ込め管理は難しい。調理時に剝いた皮や生ゴミが家庭菜園や農地に投棄されたり、芽が出たイモがそのまま畑に植え付けられたりすれば、Gpが瞬く間に野外へ拡散する恐れがある。
ただし、解禁反対派が主張する病害虫の侵入で直ちに産地が壊滅するかのような見方は議論を見誤らせる。現に米国では発生地をアイダホ州の約2%に封じ込め、年間約1900万トンの生産を維持している。日本でも過去のセンチュウ侵入を抵抗性品種で制御し、Gpも限定区域に封じ込めている。
とはいえ、封じ込めは発生圃場の作付禁止や膨大な土壌調査という代償の上に成り立つ。米国でも規制解除には約20年を要した。
北海道に生産が集中する日本で蔓延すれば、その影響は米国以上に深刻化しうる。リスクを過大にも過小にも見積もらず、被害実態や管理可能性、そしてその費用を誰が負うのかを見据えた冷静な議論が欠かせない。
国際ルールと検疫対策
世界貿易機関(WTO)の「SPS協定(衛生植物検疫措置に関する協定)」の下では、科学的根拠に基づかない輸入制限や、自国内ですでに発生している病害虫を理由にした一律の輸入全面禁止は認められない。日本国内でGpが発生し、現に緊急防除を行っている以上、日本が病害虫の侵入を理由に「全面拒否」を貫くことは制度上きわめて難しいといえる。
だからこそ、解禁に向けて「実効性ある検疫条件を課せるか」が最大の焦点となる。対策は大きく分けて①米国側での発生地管理・出荷前処理②日本の水際での徹底検査③万一の侵入に備えた国内監視・封じ込め体制、の3段階が不可欠となる。
具体的には、輸入を米国内のGp非発生地域産に限定した上で、家庭菜園などへの植え付けを防ぐ発芽抑制処理や徹底した洗浄・選別を義務づける。日本到着時の土壌付着検査を厳格化し、国内では抵抗性品種の普及やトラップ調査を進めることなどだ。
