すでに米国産生鮮イモを解禁している韓国や台湾では、生産者の総合的病害虫・雑草管理(IPM)記録や植物検疫証明書、発芽抑制処理などを義務づけており、現時点で病害虫の侵入被害は報告されていない。ただし、Gpのような線虫被害は発見まで数年以上のタイムラグがあるため、侵入ゼロを断定的に過信することはできない。
なお、「日本から米国に生鮮ジャガイモを輸出できないのに日本だけ輸入を求められるのは不公平だ」という声もあるが、そもそも日本は米国に対して生鮮ジャガイモの輸出解禁申請を行っていない。相互主義の議論は検疫協議とは切り離して整理する必要がある。
国内農業への打撃
植物検疫上で高いハードルを課したとしても、輸入解禁による農家の経済的打撃は免れない。
大規模機械化を進める米国のジャガイモ生産コストは日本の半分以下とされ、海上輸送費や為替(円安)を織り込んでも、卸売価格で国産より2~3割安く流通する可能性がある。外食や中食・総菜向けの業務・加工市場では、価格競争力に勝る米国産への急速な代替が進む公算が大きい。
家庭用の青果市場では「男爵」や「キタアカリ」といった国産ブランドへの根強い支持が残るとしても、業務用の大口需要を奪われれば、国内農家は規模の経済を失う。資材価格や燃料費が高騰する中、収益悪化による離農が進み、産地の維持が困難になる恐れは極めて高い。
1991年のオレンジ輸入自由化では、安価な米国産オレンジが流入したことで国産温州みかんの価格が暴落し、みかん栽培面積は合意当時の半分以下に激減した。
ジャガイモは単位面積あたりの収穫熱量が高く、有事における国民食料自給の要となり得る基幹作物である。短期的な通商摩擦の回避や政治的妥協のために検疫水準を甘くし、国内の栽培基盤を失うことになれば、将来的な食料危機において国民生活に重大な打撃を与えかねない。
食料安全保障の根幹をどう維持するのか、日本の外交と農業政策の舵取りが厳しく問われている。
