第二に、高リスクAIについて政府による事前審査・認証制度を導入すべきである。すべてのAIを一律に規制するというのではないが、医療、金融、電力、通信、防衛、行政、生物・化学分野など、失敗時の社会的損害が極めて大きい領域について、安全性検証、安全性の試験、サイバー耐性評価、そして人間による最終的な監督可能性を確認する制度を整えるべきである。
第三に、日本なりの独自の「安全なAI」を国際競争力に転換する戦略が必要である。日本は米中の巨大AIモデル競争のように単純に規模を競うのではなく、製造業、ロボット、医療、素材、物流、金融、防衛など、日本が強みを持つ分野にAIを組み込み、「安全性・精度・信頼性の高い産業AI」を世界市場に展開すべきである。安全基準を満たしたAIについて政府が認証を与えれば、日本製AIそのものが「信頼できるAI」のブランドになり得る。
第四に、米国・欧州とのAI安全保障協力を急速に強化すべきである。AIの安全基準を日本単独で設定するだけでは、国際的な波及効果は限定される。
米国、英国、欧州連合(EU)、豪州、韓国、インドなどと共通の安全基準、情報共有、事故報告制度を構築し、最低限の国際ルールを構築するグループ形成を促進すべきである。これはAI版の「安全保障ネットワーク」になり得る。
第五に、AI安全技術そのものを国家戦略分野として育成する必要がある。AIの能力向上だけでなく、AIが何を判断し、その結論に至った背景を検証する技術、サイバー攻撃への耐性、偽情報対策、AI同士の監視、人間による停止・介入技術などに重点的に投資すべきである。
AIの安全保障は国家安全保障政策
つまるところ、日本が目指すべき政策は、AI後進国にならないよう開発を推進しつつ、無規制のAI競争には追随しないよう注意することである。AIの安全性と信頼性を制度化し、それを日本の技術力、法規制、品質管理能力と結びつける。
そしてもう一つ、AIの安全保障は産業政策であると同時に国家安全保障政策でもあるという基本認識が、今こそ求められている。

