2026年11月6日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年11月6日

 デモ参加者達は、選挙管理委員会による有権者名簿の大規模な改定について、もっともな懸念を抱いている。この改定により、1億3000万人の有権者登録が名簿から削除された。

 この改定が、ヒンドゥー至上主義を掲げるBJPに有利になるよう意図されたものだという主張を裏付ける直接的な証拠はない。しかし、資格があるはずの多くの市民が投票権を奪われた。

 報道によれば、選挙管理委員会委員長のギャネシュ・クマールの同僚達は、改定プロセスの幾つかの局面で繰り返し異議を唱えていたという。2023年、自律的であるはずの選挙管理委員会委員長の人選について、政府が決定権を握るべきだとBJPが主張したことも疑念を招いた。

 モディはインドを「民主主義の母」と称賛する一方で、表現の自由や、活発な野党活動のための空間を保全することには、あまり熱心ではない。当局は、メディア、学術界、市民社会において政府を批判する人々をしばしば嫌がらせの対象にしている。公正な選挙を求めて立ち上がった多くのインドの若者達の決意は称賛に値する。

 より広い視点で見れば、こうした抗議活動は若者達の高まる期待に応えるためにさらなる取り組みが必要であることを示している。インドの経済成長率は現在、主要国の中で最も高い水準にあり、モディも福祉へのアクセス拡大や構造改革に多大な尽力をした。

 にもかかわらず、多くの大学卒業生が依然として良質な職を見つけるのに苦労している。こうしたフラストレーションが、権力乱用と見做される事態に対する彼等の怒りを高めている。

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「ゴキブリ人民党」はどう生まれたか

 インドでは、7月25日、教育相が辞任した。モディ政権で抗議運動によって閣僚が辞任を余儀なくされたのは初めてのことである。

 問題は壊れかけた教育制度に対する若者の怒りだった。5月、試験問題が事前に漏洩していたことが判明したことを理由に、政府が医科大学の国家入学試験を無効としたことが引き金だった。

 試験問題の漏洩は近年繰り返し起きている事件らしい。入学試験は将来の生活を決定づける関門であり、競争は学生と両親にとって苛烈だというが、それだけに怒りは大きかった。

 しかし、大学を出ても良い職は限られている。25歳未満の大学卒の40%は失業中らしい(就職しても学位に相応しい職に就いている者は8%だともいう)。

 5月15日、最高裁長官が失業中の若者を指して「ゴキブリ」だと余計な発言をした。翌日、ボストン大学を昨年卒業しボストンに滞在中のアビジート・ディプケ(30歳)が、「もし、すべてのゴキブリが集まったらどうなるだろうか?」とXに投稿した。

アビジート・ディプケXより

 彼はInstagram上に「ゴキブリ人民党」のウェブサイトを立ち上げたが、数週間のうちにフォロワーが2200万人に達した。これはモディの「インド人民党」の2倍以上のフォロワーだった。


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