中国製ゲームの水準は、ここ数年で急激にアップしているが、スマホゲームの市場形成が中国よりも早かった日本のゲームは、ゲームの完成度で、一歩先を行っている。そのため、日本でヒットしているゲームを正式なライセンスを得て展開できれば、一気に頭一つ抜け出せるという目算が中国側にはある。スマホゲームならば、WiFiで一度データをスマホにダウンロードすれば、ブラウザゲームよりも通信量は少なく遊べる。
昨年12月にはセガがRPG「チェインクロニクル」を盛大と提携して展開すると発表。KLabも北京崑崙万維科技と業務提携し、「ワールドフットボールファンタジックイレブン」の展開をすると発表し、その後、リズムアクションゲーム「ラブライブ」は盛大と展開するとした。
2月にはミクシィが大ヒットタイトル「モンスターストライク」の展開をテンセントと行うと発表している。その後も、コロプラの「クイズRPG魔法使いと黒猫のウィズ」の展開をMoyogameと進めるなど、日本のヒットゲームが次々に中国展開を始めている。中国側は競って日本のゲームを得る獲得合戦を繰り広げている。
海賊版から質の高いゲームへ
立命館大学映像学部の中村彰憲教授によると「ここ数年で、中国人ユーザーの意識の変化が起きている」という。中国製のゲームには、正式なライセンスを受けていない「ナルト」や「ワンピース」の日本のキャラクターを勝手に登場させて、人気を集めようとするゲームが少なくない。「これまで人気キャラクターやブランドをコピーして展開するのが当たり前だったのが、中国人ユーザーも正式にライセンスを受けた質の高いゲームを求めるように変わって来ている」という。
ただし、日本でヒットしたゲームをそのまま持ち込むのではなく、ゲーム内容を中国人が好むように修正する必要がある。日本と同じようにカードバトルゲームが人気を集めているが、中国では日本のように集めることを中心としたコレクション性はそれほど求められない。「中国では、ユーザー対ユーザーがゲーム内で競うことが好まれる。そうした修正を的確に施していくためには、中国企業との密な連携は欠かせない」(中村氏)という。
日本でヒットしたゲームは、絵柄の好みの違いなどから、欧米への進出は容易ではない。一方で、感性が近い、巨大市場へと成長する中国市場で成功できるチャンスはある。日本のゲーム会社がより成長できるのかどうかは、中国での成功が大きな影響を与えることは間違いない。
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