しかし、電力系統の接続費用が最終的に確定し、接続できるか否かは、[3]電力会社による供給検討と回答(供給承諾)を経た契約締結によって確定する。つまり、[2]の接続検討では系統連系工事の概要や工事費の概算を示すに留まり、その後事業者の本申込が行われた後の[3]のステップで系統接続の優先順位が確定することで、詳細工事の設計・費用が確定する。今回の接続保留は、[2]の接続検討の回答、あるいは[3]の本申込に対する回答(供給承諾)を保留しているという状態を指している。
空枠取りを見極めるために設備保留判断が遅れる
冒頭の「もっと早く保留にすべきだった」という問いについて考えてみよう。九州電力を事例に接続保留に至った経緯を振り返ってみる。
確かに、[2]段階の設備認定量だけで判断すれば、6月末にはこうした事態に至ることは予見できた。6月18日にエネ庁から公表された資料で今年3月末までの九州電力管内の設備認定容量は1755万kWにも達していることが明らかになる一方で、これは5月16日にエネ庁の需給検証で示されていた九電の夏の最大電力需要を上回っていた(電力需給に関する検討会合「2014年度夏季の電力需給対策について」)。その意味で、この設備認定全てが受け入れられないことは自明だったが、どちらも公知情報をつきあわせれば分かることで、6月下旬の時点で関係者や研究者で知らぬ者はいなかったようだ。
しかし、この段階で接続保留を行えば、それこそ「まだ認定段階なので、事業断念があるから接続は可能だ」とする反論があっただろう。また、制度上、3月末までの認定容量1755万kWの中で低圧接続される50kW未満の設備については、電力会社への系統アクセス検討(前述の[2])が行われない。また、50kW以上についても、接続本申込を経た上では事業断念する案件は少ないと思われることから、実際の接続申込量を見極めようとしていたと考えられる。
実際、九州電力の資料をよく読めば、認定量だけでなく、接続本申込量を示し、「2014年7月末時点の太陽光発電の接続契約申込み量が全て系統に接続された場合、太陽光と風力の接続量は約1260万kWに達し、これら全てが発電すると、電力需要が小さいゴールデンウィーク等の昼間の消費電力(約800万kW)を太陽光・風力による発電電力が上回るため、電力の安定供給が困難となる」として接続保留を発表している(「九州本土の再生可能エネルギー発電設備に対する接続申込みの回答保留について【詳細説明資料】」、p.5 )。
問題は設備認定時点で買取価格が確定する制度設計
したがって、本質的な問題は、設備認定量あるいは接続申込量のいずれの段階でも、実際にどれだけ運転開始に至るのか誰にも分からない制度設計にある。換言すれば、我が国FITでの買取価格の適用時期が、ドイツ等の主要なFIT導入国のように設備の運転開始時点や、少なくとも電力会社との契約時点であれば、今回の接続保留を巡る「既に投資しており損害が発生している」といった批判は避けることができただろう。
前述のエネ庁資料で記されているように、本来、再エネ発電事業者による自己資金や融資等の実施は、契約の締結時点を経てから実行することになる。これは系統アクセスの接続費用が最終的に確定していない、あるいは接続できないリスクがあるからだ。ただ、小規模事業者や個人投資家等の間には、「設備認定を受けて買取価格が確定したと思ったので、投資を既に行った」、あるいは「そもそも設備容量50kW未満の低圧接続であれば、電力会社による系統アクセス検討は不要だったので、当然接続できると考えていた」といった不満があるようだ。
これはあまりに事業者のFIT関連法規に対するリテラシー不足と言えないだろうか。また、今年度の認定から50kW以上の太陽光発電はエネ庁の認定後180日以内に場所及び設備を確保できない場合は認定が失効する解除条件を定めており、設備発注等の手続きを契約締結から早めるように促していた。いずれにせよ、そもそも、買取価格の確定が契約時点であれば、上記の混乱は生まれなかったはずである。
買取価格の適用時期が認定時点であることによって、多くの問題が引き起こされてきた。弊誌は他のメディアに先駆けてこのテーマを取り上げてきたのでご覧いただきたい(記事「バブルが始まった太陽光発電」など)。
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