2024年4月26日(金)

経済の常識 VS 政策の非常識

2014年11月6日

公共事業の効果を間違えた

 ほとんどのエコノミストは、当面のトレンドの成長率をT、消費税の駆け込み需要が成長率に与える影響をK、消費税それ自体の成長率に与える影響をS、その他の影響をOとおい成長率を予測している。

 すなわち、消費税増税前の2013年度の成長率はT+K、増税年の14年度の成長率はT-2×K-S+Oである。ここでKが2重に効いて、14年度には-2×Kとなることに注意されたい。

 2013年10月ESPフォーキャスト調査特別調査9によると、駆け込みの影響は0.5%とされていた。13年度の成長率は2.3%だったから、2.3%=T+0.5%となる。逆算すると、エコノミストは、平均的にTを1.8%と見ていたことになる。次に、消費税の本来のマイナス効果をどう見るかであるが、消費税3%分の引き上げは、GDPの1.5%分の増税であるから、その効果はマイナス1.5%と見るのが妥当だろう。すると14年度の成長率は1.8-0.5×2-1.5=-0.7%と見ることができる。しかし、多くのエコノミストがプラスの0.85%と見ていた。どこが違っているのだろうか。

 その理由は、消費税増税をすると同時にGDP1%分の公共事業を積み増したので、これがその他の影響Oでプラス1%だから、14年度の成長率は1.8-0.5×2-1.5+1=0.3%となる。これではほとんどゼロで0.85%には足りないが、円安の効果が遅れて現れて輸出が増えるなどと予想して、もう少し積み増したのだろう。あるいは、来年10月からの消費税増税で盛り上がっているのに、ゼロではまずいということで1%に近づけたのかもしれない。

 ところが、公共事業の増額が効いていなかった。建設単価が上がって、公共事業ができなくなっている。4-6月期の公共事業は伸びていない。だから公共事業の建設単価を引き上げて、できるようにすれば良いという話になっているのだが、そうすれば民間の建設単価も高まって民間工事が減ってしまう。つまり、公共事業で景気対策をするという昔ながらの戦略がうまくいっていない。

 すると、エコノミストが14年度の成長率予測をおそらく誤ったのは(もちろん、まだ結果はでていない)、公共事業の効果について十分な知識がなかったからだということになる。私も、間違えた。公共事業は長期的には非効率で、日本経済の成長力を引き下げるが、政府が建設業者を通じて鉄やコンクリート買い、労働者を雇うのだから、短期的にはGDPを引き上げると思っていた。しかし、建設単価が上がって、公共事業ができないし、公共工事の建設単価を引き上げれば民間工事が減ってしまう。

 来年10月からの消費税再増税に向けて、なんとか増税したいので公共事業をさらに拡大するなどの対策を取ろうとしているようだが、それはうまくいかないだろう。消費税増税の効果を打ち消したいのなら、別のところで減税をするしかない。増税して減税するなら財政赤字はたいして減らない。それでは意味がないなら、増税して公共事業を増やすのも意味がない。


*関連記事:なぜ日本のリベラルはリフレ政策が嫌いなのか

  
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