守備の名手として知られ、通算2133安打を記録。リーダーシップと広い視野から2度の五輪と、第1回ワールド・ベースボール・クラシックで主将に指名され、プロ野球選手会長も務めた。昨年19年間の現役生活を終えた宮本慎也氏に日本プロ野球の課題について訊いた。
1970年大阪府生まれ。PL学園高校、同志社大学、プリンスホテルを経てヤクルトスワローズにドラフト2位で入団。(撮影・井上智幸)
メジャーリーグへの選手流出を危惧する声があるが、アスリートにとってより高いレベルで勝負したいというのは自然なことでもあり、是非を問うのは非常に難しい。
だが、選手にとってメジャーリーグでプレーする目的が変わってきたことが気にかかる。野茂(英雄)さんが、はじめてメジャーに挑戦したときは、日本でのキャリアは終える覚悟だったのではないかと思う。それでも「夢」の実現のためにリスクをとった。それが今ではメジャーで実績をあげることができなかった選手が日本に戻ってきて、高額な年俸をもらっている。
いずれにしても、海外FA(フリーエージェント制度=9シーズンの選手登録で、国内外のいずれの球団とも選手契約を締結できる権利)権の取得までの年限、ポスティングシステムの方法など海外移籍の制度について固まったとは言い難い。球団、選手、ファンが納得する仕組みを議論する必要がある。
同時に、トップ選手をどうやって生み出し続けていくかも課題だ。日本のサッカーでいえば、年少の頃から優秀な選手を発掘育成したり、指導者を育成するための講習会があったりするなど、ピラミッドの底辺から頂点に至るプロセスが仕組みとして整えられている。
一方の野球では、歩みよったとはいえ、高校生にプロ野球選手が指導してはならないといった制度が残ったままだ。野球の魅力を高めるべく、野球界が一丸となって底辺からの地盤固めを進めていかなければ、今の人気を保つことも難しくなる(談)。
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