2023年2月4日(土)

日本の漁業は崖っぷち

2014年12月2日

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片野 歩 (かたの・あゆむ)

水産会社社員

東京生まれ。早稲田大学卒。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。1990年より、最前線で北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国として成長を続けているノルウェーには、20年以上、毎年訪問を続け、日本の水産業との違いを目の当たりにしてきた。著書に『日本の水産資源管理』(慶應義塾大学出版会) 『日本の漁業が崩壊する本当の理由』『魚はどこに消えた?』(ともにウェッジ)、『日本の水産業は復活できる!』(日本経済新聞出版社)、「ノルウェーの水産資源管理改革」(八田達夫・髙田眞著、『日本の農林水産業』<日本経済新聞出版社>所収)。

 現在の早獲り合戦(オリンピック)方式や、実際の漁獲量より多い漁獲枠では、獲れる時に獲れるだけ獲ってしまうので、1日で加工処理できる量以上の水揚げとなってしまうことがあります。資源的にも経済的にも、実にもったいないやり方です。

 9000トンも水揚げせずに、たとえば加工処理能力に応じて毎日1000~2000トン程度に分散していけば、以下の(1)~(3)のようなメリットがあります。

(1)加工処理能力に応じた鮮度がよい状態で、ほぼ毎日生産ができる。

(2)鮮度が保持できるために、餌などの価格が安い用途向けを回避できる。輸出向けを含め、高い価格を出して買っても採算が合うようになる。これは水揚げ金額の上昇と、加工品の売上高増加という効果をもたらす。

(3)仕事量が一定になり、極端に残業がある日と仕事が無い日に分かれてしまうケースが減少する。

 一方で現在の状態は、

(A)一旦水揚げがまとまったら、とにかく早く処理しなければならない。

(B)1日で処理できず翌日に持ち越した原料は鮮度が落ちてしまう。たとえ加工できるサイズであっても、鮮度落ちで餌用など(通称ガンガン・第8回参照)に回して処理せねばなりません。

(C)いつ水揚げがあるかわからない。一旦獲れると大漁水揚げとなるので、現場の仕事時間は不安定で大変。

アフリカでは日本のサバは「安いから」売れる

 海外で個別割当制度を実際に長年見てきた立場からいいますと、水揚げの分散は、漁業者が率先して行います。理由は簡単で、その方が水揚げする魚の単価が高くなるからです。厳格な個別割当制度を実施しているノルウェー他の漁業先進国では、水揚げ金額が上がり、冷凍加工されたサバは世界各国に高値で販売されていき、国のブランド力が高まるという好循環が起きていきます。

 日本とノルウェーのサバの輸出価格を比較するとよくわかります。2013年のサバの輸出統計を見てみますと、ノルウェーが24.3万トン 約475億円 平均単価 キロ約195円。一方で日本は11.2万トン 119億円、問題の単価はキロ106円とノルウェーの約半分。

 日本の最大の輸出国であるエジプト向けには、日本からは2.8万トンとノルウェーの8000トンより多いのですが、価格が日本のキロ104円に対して、ノルウェーはキロ130円。エジプト向けの価格は、他国向けに比べて安いので、ノルウェーは輸出を敬遠しているだけなのです。一方で日本のサバは、概して評価が低く、他の輸出国への価格と大差ありません。日本のサバはアフリカ市場でも評価が高くはなく、価格が安いというだけで売れているのが実態です。アフリカ市場が日本に求めているのは「安い価格」なのです。これではMade in Japanが泣きますね。


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