日本の漁業は働く環境が厳しく、収入もあまり多くないので、若い人にとって魅力がない産業と映るのでしょう。一方、北欧では、船ひとつとっても分かるように、労働環境も良く収入も多いので、日本のような漁業者の高齢化や後継者不足の問題は起きていません。
この漁船は全長46メートルで総トン数4,200トン。2014年の4月に完成した新船です。以前の船は2008年の建造でしたが売却したそうです。船員は6名で撮影時に乗っていない船員があと約6名いて、交代で船に乗るとのこと。以前の船も、この漁船も、乗組員の数は変わらず、船だけが巨大になっています。もちろんデンマークも個別割当制度です(ITQ)。
日本のような水揚げ規制で、例えば操業を1日ごとにした場合でも、1日休んで翌日2日分獲ってしまえば意味がありません。船が小さくても、それぞれの漁船の漁獲能力が向上していけば、魚は減っていってしまいます。要は、資源管理のためには、船の大きさが問題なのではなく、資源が今どれだけあって、どの位まで獲っても今後資源が持続的(サステイナブル)になるのかを分析し、その数量を漁獲枠(TAC)として設定し、さらに個別割当にしていくことがポイントなのです。
日本の場合は、科学的な根拠に基づく厳格な資源管理が実施される仕組みができているとは言い難いために、大型船は水産資源にとって脅威となっているのです。実際に、今の日本の資源管理体制で、大型の巻網船が増えれば、資源枯渇を加速させてしまうだけで、非常に危険です。仮に大型巻き網船が資源を悪化させ元凶であるのならば、なぜ大型巻き網の新造船がどんどん建造されている北欧の資源管理がうまくいって、漁業が成長産業になっているのか考えてみるとよいでしょう。
海外から「stupid」と言われる日本の漁業
日本とノルウェーのサバの生産現場を比較すると、その大変さと無駄が浮き彫りになります。
(1)ノルウェーでは船が沖合にいる時点でオークションにかけられます。前日には翌日仕事があるかないかわかっていますので準備が楽です。日本では朝水揚げ現場でセリがあり、魚が買えたら大急ぎで人を集めねばなりません。
(2)ノルウェー漁船は獲れた魚のサイズや数量を正確に報告します。魚を見ないでオークションが行われるので、間違った報告は信用がなくなり、入札価格にも響きます。申告より小さい場合は値引きが行われます。日本の場合は、自分の目で見て買い手が判断します。失敗は許されません。