「福祉という言葉は嫌いだ」。母親のみならず父親にとってももっとも子育てをしやすい街を目指す市長が、このように語る真意とは。少子高齢化が加速する時代の「自治」のあり方を問う。
待機児童ゼロを目標にはしない
――インバウンドは地域外から人を呼ぶ「現在」の戦略ですが、「未来」の人口増のための子育て支援についてもお聞きします。千葉市は今年、横浜市から1年遅れで「待機児童ゼロ」を達成しました。ただ、横浜市の場合は「ゼロ」の定義が国とは異なることや、2年連続で定義を変更したことに批判もありました。少し失礼な質問ですが、横浜市が「ゼロ」を宣言した2013年4月時点で千葉市の待機児童はわずか32人だったわけで、強引にゼロ宣言してしまえば良かったという後悔はありませんか?
熊谷:ちらっと思いました(笑)。1年の遅れはイメージ戦略としては大きな差ですので、私もやはり千葉市役所の「実直に、愚直に」というマインドに染まっているのかも知れません(笑)。
それは半分以上は冗談ですが、千葉市の子育て支援は短期的な目標を目指していないんです。十分な広さと緑のあるなかで子どもを育てる環境が、千葉市にはあります。その上で待機児童だけではなく、病児・病後児保育など、子育てしている人なら「わかる、わかる」という施策をしっかりとしていって、そこでもブランド化をしていきたいんです。
支援の質にもこだわります。保育士の数や施設面積についても妥協せずに求めていった上での待機児童ゼロ達成ですから、いずれ千葉市の取組みはもっと評価されるはずです。その時はしっかりと周知していきます。
保育所の量を追いかけることも大事ですが、質は一度崩れてしまうと建て直すのが困難です。そこは妥協したくないんです。どこの自治体も謳うのはママ支援ばかりですが、それだけではなく、時代の変化を見据えて父親の子育て支援にも力を入れて、行政としての役割を果たしていきたいと考えています。