2024年7月27日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年12月18日

 確かに、オバマ政権のアジア回帰が、クリントン前長官が提唱したものとは変質して、軍事的側面が引き下げられてきている中、論説の言う通り、議会共和党がアジア政策でオバマ政権をリードすることが期待されます。TPP締結に不可欠なファスト・トラック権限の付与などは、共和党主導の新しい議会の下でのほうが可能性は高いでしょう。

 しかし、議会共和党とオバマ政権は、アジア政策においてどの程度まで協力できるでしょうか。本来、共和党は中国に対してより厳しい見方をしている上に、新しい議会では、米国の外交政策で重要な役割を果たす上院の軍事委員会の委員長にジョン・マケイン議員が、外交委員会の委員長にボブ・コーカー議員が就任する見通しです。両議員とも中国の対外政策に批判的であり、共和党が中国に対して、より強硬な政策を主張することが予想されます。クリントン前国務長官のアジア回帰のそもそもの眼目は中国けん制でしたが、今や、オバマは、「アジア重視の中心は中国重視である」と言っています。このようにアジア重視策における中国の位置づけが異なっている共和党とオバマ政権が、果たしてどこまでアジア政策の根幹で協力できるか、疑問が残ります。

 TPPの推進、香港などでの人権弾圧、中国によるサイバー攻撃などに対する対応で、共和党主導の議会がオバマ政権に圧力をかける可能性は高いでしょうが、といって、期待し過ぎるべきでもないという程度に認識しておくのが良いのでしょう。

 なお、予算の強制削減の再発動阻止が最優先課題であることは、論説の言う通りです。国防費の強制削減が米国の安全保障政策に与える悪影響は万人の認めるところであり、共和党は、大局的見地から強制削減の再発動を阻止すべきです。

  
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