2024年4月26日(金)

Wedge REPORT

2015年1月6日

AIIBの問題点

 問題点としてAIIBのビジョン・理念、ガバナンス、融資政策・条件、ドナー間の協調の4点が挙げられる。

(1)ビジョン・理念

 新たな国際機関を設立するにあたっては、それがなぜ必要なのか理由を明らかにするとともに、使命とするビジョン・理念を明確にする必要がある。AIIBは、「貧困削減」の使命を世銀やADBに委ねるとしつつ、それに代わるビジョンを提示していない。インフラの構築、連結性の強化、経済発展は究極の目的を実現するための手段に過ぎず、インフラを通してどのようなアジアを実現させようとしているのか、明らかでない。

 AIIBは、たとえば「持続的・包摂的なアジアの構築」などのビジョンを掲げるべきだと提唱したい。「持続的」とは環境と調和のとれた経済発展を指し、「包摂的」とは成長・発展の果実が全ての国・人々に行き渡ることを意味する。このビジョンは、今の中国の指導者にとって十分受け入れられるものだ。

(2)ガバナンス

 本部は北京、総裁は中国人(初代は金立群氏と目されている)になることが予定されている。出資比率は各国の国内総生産(GDP)に応じて決められることから、中国が最大の出資国になり、その議決権シェアは最大50%と突出して大きくなろう。

 ADBの副総裁を務めた経験のある金立群氏によれば、「世銀やADBと異なり、本部常駐の各国政府代表者(理事)をおかず、各国代表者は政策と融資計画をあらかじめ承認・決定し、それが一定期間の間、実際に行われ成果が挙がっているかどうか確認して、経営陣を評価すべきだ」という。

 つまり、常駐の理事による日常的な業務のチェックや融資案件ごとの可否の判定は行わないことになる。

 常駐の理事を置かない方式は、欧州投資銀行(EIB)でとられており、意思決定を迅速にできるというメリットがある。しかし、アジアの各加盟国間で政治的な意図が共有できず、インフラ支援の優先度が大きく異なる可能性もある。そのため、プロジェクト案件ごとの、各国代表者による頻繁なチェック・アンド・バランスが必要になるはずだ。

 こうしたガバナンス面での配慮がなければ、中国は総裁と本部をともに手にし、資本の半分ほどを拠出するだけで、みずから好む国にみずから望むインフラ支援を、二国間支援に比べて2倍のレバレッジを効かせて行えることになる。

 要するに中国は援助予算総額を増やさずに援助効果を倍増させ、かつAIIBを対アジア外交強化のために用いることができるのである。


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