使途の内訳を見てみると、確かに経産省など他省庁の施策との重複感がある。他省庁との連携事業として明確に位置づけられているのは約25%の260億円に留まっており、他の大半については環境省単独の事業になっている。エネルギー特会予算によるエネルギー需給構造高度化対策に関わる平成26年度予算約1100億円のうち、約4割の400億円以上が太陽光・風力発電などの再生可能エネルギー対策に当てられている(うち、他省庁との連携事業は46億円に留まる)。
これらの施策が、省庁間連携によって役割が調整された上で、かつ政策的知見・専門的知見を踏まえて、効率的に実施されているのであれば問題はない。しかし、いくつかの目玉事業を見ると、果たしてそうなのか、疑問が生じる。
精査も検証も不十分
浮体式洋上風力発電実証事業(14億円)を実施しているが、陸上風力の技術開発をはじめ、福島県沖での洋上風力発電事業も経済産業省によって取り組まれている中、環境省が長崎県で独自に実施する意義はあるのだろうか。これは最先端技術であり、そう簡単に事業実施のための知見が蓄えられるものとも思えない。
同じことは、GaNデバイスの技術開発・実証事業についても言える。総理を議長とする総合科学技術・イノベーション会議が各省のプロジェクトを調整した上で経済産業省においてシリコンカーバイド(SiC)やGaNに関する研究開発が行われている中、なぜ環境省が独自にGaNに特化した事業を実施するのか。このような技術開発・実証事業は、他の技術ともよく比較検討した上で、事業内容をよく精査した上で適正規模の補助をすることが望ましいが、そのような検討を十分に実施する体制になっているのだろうか。
グリーンニューディール事業(220億円)など地方向けの再エネ導入支援事業についても、経産省で全量買取り制度(FIT)等の多くの政策をすでに実施しており、さらにはそのCO2削減のための効率性が疑問視されている状況において、更に単独での補助金事業を実施することが果たして効率的なのか、疑問が生じる。
省庁間で適度な政策競争があったほうが、政策の現場に緊張感があり、その改善が図られるという側面もあるかもしれない。ただしこれも、政策の効果があったかどうか、きちんとレビューをするシステムがあることが前提である。これまで、経団連の自主的取り組みについては毎年のフォローアップが審議会・第三者委員会で行われ、PDCAが実施されてきた。多くの委員が指摘しているように、同様なPDCAの実施が、政府の施策についても必要であろう。それによって、省庁間の連携もより効率的なものになるはずだ。
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