「ロシアへ編入することを目指すのが適切である」
3. ウクライナ憲法は、ウクライナ東部の領土及びクリミアをロシア連邦に統合することを認めるメカニズムとはなり得ない。
ウクライナ憲法第71条は、領土の変更はウクライナ全土での住民投票によってしか認められないとしている。同時に、ウクライナ憲法第72条によれば、住民投票は最低300万人の有権者の要求に従って公布される。住民投票を求める署名は最低でも3分の1の州で集められたものでなければならず、各州で100万人以上の署名が必要とされる。
しかし、逆説的に言えば、ロシアとウクライナの統合に関する法的基盤は欧州評議会の一部である欧州国境地域委員会の「ロシア・ウクライナ欧州地域(ユーロリージョン)システム」としてすでに形成されている。欧州地域「ドンバス」には、ドネツク州(訳注:ウクライナ)、ルガンスク州(同:ウクライナ)、ロストフ州(同:ロシア)、ヴォロネジ州(同:ロシア)が、欧州地域「スロボジャンシチナ」にはハリコフ州(同:ウクライナ)とベルゴロド州(同:ロシア)が、欧州地域「ドニエプル」にはブリャンスク州(同:ロシア)とチェルヌィホフ州(同:ウクライナ)が含まれる。
ロシアは、EUの観点から法的に正当と見なされるよう、この欧州地域制度を利用すべきである。すなわち、国境地域及び国境間の協力に関する条約を結び、これに続いて常に親露的な選挙傾向が存在するウクライナの地域と国家的な条約上の直接関係を結ぶべきである。
その最たるものはクリミア共和国、ハリコフ州、ルガンスク州、ザポリージャ州、ニコラエフ州、ドニエプロペトロフスク州であり、ヘルソン州及びオデッサ州はその傾向はそれよりも低い。(このリストからはスム州及びドネツク州は除外される。前者においては同地のバトキフシチナ党の選挙上の影響力が強い。後者においては、リナト・アフメトフの率いる現地のビジネス・エリートと同地に利権を持つ反体制派オリガルヒとの政治・ビジネス上の関係が強いためである)
現地のエリートたちは、ロシアの新たな統合イニシアティブとの連携に対して以前よりも積極的になっている。危機勃発以前、エリート達は「弱いキエフ」と「強いモスクワ」を好んでいた。しかし、何もかもを失う危機に立たされた今、彼らは座して大粛清を待っているわけではない。ヤヌコヴィチが政権を去った後、どのような政治勢力が「新キエフ合意」をつくろうとも、このような粛清を始めることは避け得ない。そうなれば、地域エリートたちは彼らの「独立」を失うことになろう。
キエフで進行中の事態は、ヤヌコヴィチの権力が終焉しつつあることを明瞭に示している。したがって、ロシアが適切な行動を取るための時間はあまり残されていない。ウクライナの首都で殺されている暴徒の数は、内戦が不可避であり、ヤヌコヴィチがその地位を守れるような合意は不可能であることを示している。
このような状況下では、幾つかの地域の反集権的な感情を利用して東部諸州をロシアへ編入することを目指すのが適切である。この取組みにおいてはクリミアとハリコフが最重要地域である。これらの地域には、ロシア連邦への全面的な編入を支持する強力なグループがすでに存在しているためである。