しかし、先述したとおり、経営力のある農業経営者や農業に取り組む才覚を持つ若者が育ってきており、彼らに呼応する企業の取り組みによって、国内農業も輸出も海外農業生産も、やがて大きく成長することになるだろう。
また、諸外国と比べて検疫体制が未成熟な我が国は輸出においても不利な条件に置かれている。まさに戦略的な行政施策が必要だ。フードビジネスとの連携、輸入国を納得させる検疫体制の整備など、農水省は欧米諸国と同様の戦略的な輸出促進に取り組むべきなのである。しかし、現実は、日本農業の成長にとっては害毒にしかならず、どの先進国も政策指標とはしていない“食糧自給率向上”を農業政策の根幹にし、そのために3000億円もの予算が使われているのに対して、輸出振興予算は20億円に過ぎない。しかもその運用が戦略的ではない。現在の農業政策は、農水省の省益確保、農業団体の居場所作りとしてしか機能しておらず、さらに自民党から共産党に至るまでの政治家は選挙目当てにしか農業を語らない。しかし、我々が先進国の人間であるのなら、民の力でこそ未来を創ることに取り組むべきなのではないだろうか。
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