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2015年6月9日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

Q INPEXの取り分はどのくらいになるのか

きたむら としあき。1972年、東京大学法学部卒業、通商産業省(現経済産業省)入省、通商政策局長、経済産業審議官を経て、2010年6月から現職

A 現在日量160万バレル産出しているが、これを今後2年間で180万バレルに増産する計画で、いまそのための投資をしている。5%の権益を取得したため、いまは8万バレルだが、増産すれば9万バレルになる計算だ。これはそれなりの大きな量で、しかも陸上なのでINPEXが権益を保有している海上油田よりも生産コストが低く安定している。アブダビ政府はこの陸上油田のことを「アブダビのクラウンジュエル(宝石)である」とかねがね言っていた。この油田の開発を誰と一緒にやるかはアブダビ政府にとって大変重要な判断であり、その中で当社が選定されたことは非常に光栄である。

Q アブダビ政府が見返りとして日本に期待しているものは何か

A アブダビ政府は日本に対して石油開発にとどまらない様々な分野での関係強化を求めている。日本からは教育、医療、代替エネルギーなど日本の得意分野で協力をしてきており、これについてアブダビ政府はそれなりの評価をしている。

 だが、ほかの国などはもっとすごい協力をしている。フランスなどは大学の分校、ルーブル美術館の分館まで作っている。米国も最先端の医療施設を備えた病院を開設するなどの協力をしてきている。また我々にはできないが、米国、英国、フランスは軍事面の協力もしている。韓国も特殊部隊の訓練の支援をしていると聞く。

Q この陸上油田から産出する原油はホルムズ海峡を通過して日本に運ばれるのか

A 現在は産出する一部の原油は、ホルムズ海峡を経由して出荷されているが、およそ60%は陸上パイプラインでフジャイラ港に運ばれて、そこから出荷される。フジャイラ港はインド洋に面しているため、海上原油輸送上のボトルネックといわれるホルムズ海峡を回避できる。将来的には100%パイプラインでフジャイラに運ぶだけのキャパシティがあるので、エネルギーセキュリティー上、この陸上油田の意義は大きい。

フジャイラ港の石油積み出し基地

 さらにこの陸上油田から産出される原油はマーバン原油と呼ばれ、API(American Petroleum Institute=比重を示す単位)約39度の軽質原油で、ガソリン特率も高い。このため日本の石油精製会社だけでなく、世界中の精製業者が好んで引きとっている原油だ。そのようなリクイディティ(流動性)の高い原油を日量8万バレル相当も扱えることは、販売上の強みになり大きなメリットがある。

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