また、オフサイドという非常に難解な待ち伏せプレーの禁止も理解しなければいけない。
指導者は何回か行う練習の中で明確に指摘をして、言葉を砕きながら説明を繰り返した。
最初のうちは、それでも前に投げてしまう少年や、パスをしたらバスケの如く前方に猛ダッシュしてしまう少年もいたが、数回の失敗によって徐々に学び始める少年も出てきた。
ある少年は手に、ある少年は額に、刺青が入っている。その少年が前に投げてしまい、審判から笛を鳴らされると、その容姿とは不釣り合いな、屈託のない笑顔を見せるようになった。
2時間は本当に短時間に感じるほどの時間だった。
彼らは真剣になり、そして、悔しがったり、喜んだりした。
眠っていた情動が根っこの部分から揺れ動かされたような、そして、隠していた幼さが隠しきれなくなった、そんな様子に私には見えた。
子どもは子どもらしく。そして、大人はそこに必要以上に関わって、熱を伝えることによって、ようやく教育はスタートする。
頭ごなしではなく、高圧的ではなく、やらざるを得ない環境を整えて、興味の湧く言葉を投げかけて、面白みのある指導をする。
それぞれが、それぞれの役割分担をしっかりと行うからこそ、子どもが成長していくと実感できた。
そして、その”それぞれの役割分担”こそ、ラグビーの、スポーツの持つ妙だと痛感した。
さて、次へのステップアップを考えることが楽しくなってきた。
(水府学院「絆」プロジェクト~タグラグビー交流マッチの詳細は、前号『社会に開かれた少年院へ~「タグラグビー交流マッチ」実現までの道のり』に記しております。http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4739)
前号に限らず『ルポ・少年院の子どもたち』のバックナンバーをご一読下されば幸いに存じます。http://wedge.ismedia.jp/category/rugby
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