2024年4月27日(土)

ヒットメーカーの舞台裏

2015年8月3日

 性能面では風量と直進性、さらに騒音が課題となった。サーキュレーターの性能を高めるには風の量と直進性が必要だ。誘引気流によって量の確保はできるようになったが、吹出口から出た後に風が干渉し合って拡散してしまう。小田は吹出口とその周囲の6つの吸気口の断面積の割合が干渉に影響していると着目。根気よく試作とシミュレーションソフトによる解析を重ね、理想の割合を導き出した。騒音は、本体に内蔵されるファンの羽根の形状や本体内部の造形によって克服した。

 こうして設計まで漕ぎ着けたものの、更なる難関に直面する。独特の複雑な形状を樹脂で造るという量産技術の壁だ。小田は「開発したけどモノがつくれない状態だった」と振り返る。生産技術部門などと手を尽くし、金型の加工や塗装などの条件をクリアできる企業を国内外に求めた。半年ほどかけて高度な技術を擁す協力会社を愛知県内で発掘することができた。

 プロジェクトは、いつしか全社挙げてのものとなり、メンバー全員が成長する機会になった。そのなかで小田は「これからも、お客様に驚きや満足を感じていただける商品を送り出したい」と、挑戦への高いモチベーションを獲得した。(敬称略)

小田一平(Ippei Oda)
パナソニックエコシステムズ R&D本部ユニットリーダー
1981年生まれ。2006年に名古屋大学大学院理学研究科の修士課程を修了し、入社。材料部門で加湿フィルターなどの除菌技術開発に従事。08年からはファンや風路設計、気流技術開発などを担当。近く2歳になる長男の育メンとして、最近は趣味のテニスから遠ざかっている。

  
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◆Wedge2015年8月号より

 


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