2024年7月16日(火)

Wedge REPORT

2015年7月9日

 外国人観光客の増加でネックになるのが言葉の壁。その壁を克服するツールとして実用化が期待されているのがコンピューターサーバーを駆使した翻訳ソフトを使った同時通訳端末だ。この端末は20年以上研究開発され、現在もテスト運用されているが、まだ翻訳の精度に問題が残されている。このため、目標とされている2020年の東京オリンピック開催までは、低価格のアナログ型TV電話が重宝されそうだ。

テスト段階の同時通訳端末

 東芝は、音声認識と機械翻訳の技術を使って、日本語、英語、中国語などを翻訳してパソコンやスマートフォンなどのモバイル端末に表示するソフトの開発を進めている。翻訳したい外国人の音声情報をサーバーに送り、サーバーが翻訳アプリを使って翻訳し、スマートフォンなどに日本語で表示する。話している途上から通訳結果を表示するため、発声が終われば即時に全体の翻訳結果が分かる。

VoiceTra4U

 規則ベースと統計ベースという異なる翻訳技術を組み合わせたハイブリッド機械翻訳技術を使って、多様な表現に対応可能な翻訳を実現している釜谷聡史・研究開発センター研究主務は「英語と中国語については、旅行・日常会話の翻訳精度が業界トップレベルの90%程度に到達しつつある。現在、ショッピングセンターなどで運用実験をしており、東京オリンピックまでには実用化したい」という。

 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は、12年に27言語の翻訳が可能な音声翻訳アプリ「VoiceTra4U(ボイストラ・フォーユー)」を開発、スマートフォンがあれば無料でダウンロードして瞬時に翻訳が可能という。現在までに100万回以上のダウンロードがされているが、翻訳ができるのは旅行会話など短い会話の翻訳に限定されている。このため、長い会話にも対応できるように改善努力をしている。

 総務省は東京オリンピックが開催される20年までに、翻訳言語を絞って「ボイストラ」をさらにレベルアップさせた精度の高い音声翻訳アプリを開発するグローバルコミュニケーション計画を民間企業も参画して進めようとしている。

 パナソニックなど大手家電メーカーはこの計画に参加、NICTが開発している翻訳エンジンを活用し、日本語、英語、中国語、韓国語の4カ国語に対応した多言語翻訳機の開発を進めている。パナソニックは独自の最先端技術を生かし、行き先の地図などを高精細の4Kで表示できるタブレットを使った翻訳機も実用化しようとしており「オリンピックまでには使い勝手の良い音声翻訳端末を提供できるようにしたい」(田中克洋・東京オリンピック・パラリンピック推進本部事業開発部事業推進課長)と、訪日外国人の「おもてなし」に役立てたい考えだ。

 また、同社は多言語通訳端末の実用化に向けてJTBと協業して商品開発を進める。具体的には石川県の和倉温泉加賀屋や京都ホテルオークラなどと協力して通訳端末の実験を行い、利便性を点検することにしている。


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