2024年11月25日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年8月11日

 (5)米国の核兵器は更新が必要である。 ロシアの核兵器による威嚇に対応するために、米国の核能力は近代化する必要がある。核拡散に対抗するために、信頼できる核の打撃能力の維持も必要である。紛争のエスカレーションの制御は、より困難に、より重要になっている。

出典:Janine Davidson,‘Five Key Takeaways from the New U.S. National Military Strategy’(Council on Foreign Relations, July 7, 2015 )
http://blogs.cfr.org/davidson/2015/07/07/five-key-takeaways-from-the-new-u-s-national-military-strategy/

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 今回デンプシー統合参謀議長が発表した「国家軍事戦略」は約16ページの文書ですが、ここでデビッドソンが5つの要点として要約しているものは、正確にその内容を反映しています。

 今回の「国家軍事戦略」には、びっくりさせるような点はありません。

 脅威認識として、イスラム過激派の問題、いわゆるテロ問題と国家間紛争のいずれが深刻かについて、この「国家軍事戦略」は、国家間戦争の脅威は低いが、増大しつつある、としています。これは、国家間紛争への関心が高くなっていることを示唆しています。確かにテロは厄介ではありますが、最近の日本の安保法制についての議論における表現を借りれば、テロは「存立危機事態」にはなりにくく、戦略的脅威とは言えません。「国家軍事戦略」においては、国家間紛争、主として中国を念頭にアジア・リバランスも強調されており、これは望ましいことです。

 また、技術が迅速に拡散する中で、米軍の技術的優位が減ってきていること、および、非対称な技術・方法によって、米国の技術優位は無きに等しくされ得る、との問題意識が示されています。今は削減傾向にある米国防予算ですが、こういう問題意識が削減への歯止めにもなることが期待されます。

 今度の「国家軍事戦略」は地味ではありますが、常識的なよい国家軍事戦略である、と評価できるでしょう。

  
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