米国の対中関係は複雑かつ多面的である。しかし、過去の経験を見れば、こちら側が弱い立場を見せた時、中国が決して前向きに反応しないことは明白である。台湾につまらない屈辱を強いたり、必要な訓練への参加を認めないことにより、事実上中国に拒否権を与えている。米国は友邦を守りアジア太平洋の国際秩序を堅持することを中国に見せるべきだ、と論じています。
出典:J. Randy Forbes,‘Taiwan Needs a Strong Ally’(Wall Street Journal, July 16, 2015)
http://www.wsj.com/articles/taiwan-needs-a-strong-ally-1437066509
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この論説から、軍人の交流や総統の訪米などについて、米台関係が種々の規制を受けていることがよく分かります。フォーブスが中国配慮に基づくつまらない屈辱的な規制は撤廃すべきだと主張するのは、下院軍事委海軍力等小委員長としては当然でしょう。フォーブスはこれらの規制は「米国の指導者達」の一貫した政策の結果だとして批判していますが、具体的にどの政権ということは明言していません。米国の台湾政策は、共和、民主党政権を問わず、基本的には72年の米中共同声明とその後の両国のやり取りを通じて、積み重ねられたものだからでしょう。しかし、その中でも1998年のクリントン大統領の3つのノー政策(台湾の独立不支持、二つの中国及び一中一台の不支持、台湾の国連等国際機関への加盟不支持)の発表は、米国内で批判されました。
フォーブスは、中国に弱さを見せると中国は益々大胆な行動を取ってくると対中警戒論を述べています。少なくとも今までの中国の行動を見れば、正しい指摘です。我が国も、この点を十分認識しておくことが重要です。世界で経済力をつけ、責任も持つようになった中国と協調することは結構ですが、中国に「弱さ」と誤解されないようにしなければなりません。
他方、中国は、一つの中国の原則に基づき、国内法や政府の発言を通じて、台湾が独立宣言をすれば、武力行使を辞さないと宣言しています(2005年の反国家分裂法により明文化)。中国が、過去3回、台湾海峡で武力行使を含む危機を起こしたことを考えると、あながちブラフと片付ける訳にはいきません。米国は、台湾海峡で紛争が起きることは避けるべきだと考えています。中国に対する過度に強硬な姿勢によって武力紛争が起きるようなことは避けつつ、中国に「弱さ」とみられないよう、ぎりぎりのラインを追及していく他ないでしょう。台湾問題は、「現状維持」以外に現実的な解はありません。米国は、中国については関係発展と行動の牽制、台湾については防衛支持と行動の抑制という2つのゲームを同時にやっているのです。
なお、台湾問題は基本的に国家間の関係の問題として議論されますが、この問題の議論に当たっては、もっと台湾住民の考えを重視することが必要だと思います。
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