2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年9月17日

 より低い成長率を恒久的に受け入れる時が近づいている。中国指導者の正当性と改革の意欲が試されるであろう、と論じています。

出典:George Magnus,‘The Chinese model is nearing its end’(Financial Times, August 21, 2015)
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/388bf2ca-475a-11e5-af2f-4d6e0e5eda22.html#axzz3jnKkdVY0

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 中国の経済、そして経済政策が大きな曲がり角に来ていることは確かのようです。習近平政権は、従来のように輸出と投資に頼る政策が行き詰っていることは十分認識しており、改革を実施し、消費主導の経済への転換を図ろうとしてきました。ところが、習近平の権力の集中と反汚職運動が、官民を委縮させ、改革の停滞を生んでいるといいます。そうであるとすれば、無理な投資により高成長を維持しようとの方針を放棄したとしても、改革は進みません。これは単なる経済的な移行の危機であるのみならず、政治が絡んだ危機です。習近平が権力の集中と反汚職運動を続けながら、いかに改革を推進するか、習近平に突き付けられた難題です。

 中国がより低い成長率を受け入れざるを得ないというのはその通りでしょう。7%成長を維持するために無理で無駄な投資を続けることはできません。

 しかし、より低い成長率はそれ自体大きな問題をはらんでいます。イデオロギーの求心力を失った中国共産党政権にとって、経済的福祉の増大が正当性のよりどころです。成長率が低下する中で、国民に生活が悪くなったとの実感を抱かせないようにする必要があります。これは、とりもなおさず、消費に軸足を移すということであり、成長率低下の環境の中では改革が一層必要となります。

 もう一つの問題は失業率との関係です。かつて7%成長の必要な理由として雇用の確保が挙げられていました。成長率が低下する中で、いかに失業率の低下を防ぐかが大きな課題です。論説が指摘するように、中国の実際の失業率が公式の4%よりはるかに高いとすれば一層然りです。

 中国経済は従来の発展モデルがもはや有効でなく、新たな発展モデルを模索しています。まさに移行期にあります。それと同時に、その移行には難問山積で、移行の危機です。習近平政権がこの危機を乗り越えられるか、その意味で危機は経済的危機にとどまらず、政治的危機でもあるのです。

  
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