日本に似た理由で子宮頸がんワクチンの接種率が低迷している国もある。しかし、オーストラリアではすでに約10年の定期接種の実績があり、男子への定期接種も始まった。日本人だけに副反応の多いワクチンや、オーストラリア人だけに副反応の少ないワクチンなど本当にあるのだろうか。
私たちは声の大きい人たちの声だけを聞いて騒ぎを広げ、日本だけでなく世界中の女性の「守れる命を守ること」に与える悪影響に対し、これほどまで無自覚であってはならない。
最後に筆者のもとに医師たちから寄せられている数多くのメッセージの一部を紹介したい。
この記事を出すには大変な勇気が必要だった。筆者が製薬会社の回し者である、国のプロパガンダを広げる御用医師だといった根も葉もない中傷も寄せられている。そういった反応があるのは想定の範囲内だったが、考えてみてほしい。この記事を書くことは筆者にとってリスクになることはあれ、どんな得になるというのだろうか。
しかし、記事を出した意味はあった。一般の読者からも共感の声が聞かれ、なによりもワクチン接種とは関係なく同じ症状に苦しんだ経験のある女性たちの声や、子供にこのワクチンを打たせ、報道に戸惑う親の声、あるいは子宮頸がんで大事な人を失ったという人の声などを聞くことを通じ、真摯にこの問題を考えている人々が社会にこれほど多くいたことを知ったからだ。
医療界の片隅にいるひとりとして書いたこの記事が、専門家が考えていることをはっきりと口にし、政策担当者が専門家の科学的意見に基づいて意思決定をするきっかけとなることを願う。そして、症状に苦しむ少女たちが1日も早く正しい方向で救済されることを。
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