結婚を左右する「子供」という価値観
「仕事が一番だったんだよね。今もそうだけど、彼にしたい男性の条件は、『仕事の邪魔をしない人』で、『忙しいときは家事をやってくれる人』だから」
仕事を持つ女性なら、共感する人もいるだろう。
特に美智さんの年代の場合、「仕事か、結婚か」という選択を女性が今以上に迫られた時代背景もあったかもしれない。
またもう一つ、女性の場合、結婚するかどうかを左右するのは、「子供を持ちたいかどうか」だろう。もちろん、男性にも、「子供を持ちたいから結婚したい」という気持ちはあるだろうが、女性の場合は年齢もシビアに関係するだけに、強いモチベーションになる。
私は以前、『婚活難民』という本を書いたのだが、そのときに取材した100人の女性たちのうち、「絶対に子供が欲しい」という強い意志を持つ人たちから順に結婚を決めていくのを目の当たりにして、実は衝撃を受けた。「自分が思っていた以上に“子供を持つ”という価値観は結婚を大きく左右するのだな」と、強く思い知らされたからだ。
増える「専業主婦」希望
子供について、美智さんは、「彼との間にできればよかったんだけど、そのころは私の仕事があり得ないくらい忙しくなっていて、正直言うと、彼と過ごす時間を作るのも苦痛なくらいだったから」とやはり仕事優先だったようだ。
ちなみに内閣府の資料によると、専業主婦世帯と共働き世帯の数が逆転する分岐点は、91年から2001年ころにかけてである(内閣府「男女共同参画」白書より。http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1480.htmlの表も参照)。まさに美智さんが働き始めた時期と重なっているのにプラスして、美智さんが仕事を始めたのは、男女雇用機会均等法が施行された直後でもある。
当時は美智さんのように、「結婚をするよりもバリバリと働いていたい」女性が数を増やしていたのだ。
一方、現代の大学生たちに聞くと、「専業主婦になりたい」という女性たちも増えてきていて、専業主婦になることがある意味、「憧れ」になっていたりもする。
「憧れ」が手に入りそうな状態になっているとき、人は必死に努力を始めるものだが、現代の独身女性が専業主婦を目指して婚活をするように、美智さんは必死に仕事をした。