2024年12月22日(日)

古希バックパッカー海外放浪記

2015年10月11日

サントリーニ島(2014.5.1-5.13)

朝からいきなりヘビートーク
『スレンダー美魔女の半生』

 5月13日午前7時半:

 サントリーニ島での最終日。私は朝食を早めに済ませ荷物を整理してから最後の見納めに世界で一番美しいという遊歩道から海を眺めた後、白い教会の前の広場のベンチで一息入れていた。

イオ村の遊歩道から見る朝陽

 突然スリムジーンズにタンクトップの長身のスレンダー美人がモデルのように颯爽と広場に登場した。宝塚のトップが舞台に登場するように堂々としており立ち振る舞いが凛としている。銀髪をショートカットにしており一見してアラサーの北欧系女子と推測。

 彼女は海を静かに眺めた後で私の隣のベンチに近づいてきた。そのときふと目があった。条件反射的に私は「良い天気ですね」と挨拶したらニコリと会釈が返ってきた。左肩に小さな薔薇の花のような刺青が目に入った。

 「素敵なtattooですね。そのtattoo(刺青)に何か特別な思い出があるのですか」私のこの問いかけから美魔女の長い物語が始まった。

 「まあ! 嬉しいわ。むかしむかしの物語よ。私はオランダ人なの。学生時代にアメリカに旅行にいったの。フロリダでバイクのライダーの彼と知り合ったのよ。大きなハーレーに乗って長髪でマッチョな彼に一目惚れ。フロリダからアメリカ南部を廻って、それから中西部を彼のバイクで旅したわ。夢のような日々だったわ」

 「映画“イージーライダー”のような世界ですね」

 「そうそうイージーライダーよ。彼の逞しい肩の薔薇の刺青を真似て小さな刺青を同じ場所に彫ってもらったの。でも夢は長く続かないものよ」

 「彼と別れてからは?」

 「オランダに帰って学校を卒業してエアラインに就職したの。KLMの客室乗務員よ」

 「それじゃあ、乗客の男性から随分アプローチがあったでしょう?」

 「そうね。でも最終的に長く付き合ったのはやはりKLMのパイロットかな。だけどフライトの日程がそれぞれ違うから、いつもすれ違い。結局別れるしかなかったわ」

 「それで“センチメンタル・ジャーニー”でサントリーニ島に来たというわけですか」

 「そうじゃないのよ。パイロットの彼氏と別れた後に機動隊の隊長のポリスマンと知り合ったの。それがすごく男らしくて制服姿が素敵なのよ。数年彼と付き合ってから彼と結婚したの。子供はできなかったけど結婚は10年間続いたのよ。ところが一年前に問題発覚。彼は男同士の付き合いで飲み代を奢ったり、車や時計にお金を使ったりしてもともと浪費癖があったのよ。最後は電気や水道の請求書が来ても引出しに隠して知らんぷりしていたのよ。それを私が見つけて問い質したらどうも女に貢いだらしく歯切れが悪くて。それで別れる決心をして先月やっと正式に離婚が成立したのよ。それで昔から一度は来てみたかったサントリーニ島にきたのよ」

 「サントリーニ島に特別な思いがあるの?」

 「KLMに勤務していたときに毎月数回フライトでサントリーニ島に来ていたの。でもオランダから日帰りのフライトなので一回も空港から出たことがないの。その憧れの島に離婚成立を契機に人生の区切りとして初めて降り立ったという次第よ」

 私は彼女の半生の出来事を整理していたら思っていたよりも年上であることに気が付いた。

 「私は1953年生まれだけど、ひょっとしてあなたより10歳くらい上かな」

 「正解よ。私は1963年生まれ。51歳よ。」

 「えっ? 驚いた。すごく若く見える。モデルさんのような素敵なボディーラインだけど何か特別なケアをしているのかなあ。」

 「スポーツはなんでも大好き。特にウィンドサーフィンは一年中やっているわ。」


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