経団連企業も8月1日選考解禁を遵守していたわけではない。就職情報会社ディスコが行ったアンケートでは「大手企業の78.7%が7月までに面接を開始した」との結果が出ている。大手商社の内定者、日本大学4年生の山田博さん(仮名)によれば「大手企業はどこも表向きとは別の選考ルートがあった」という。
4月頃から「会社のことを知って欲しい」と人事に通算4回呼び出された。電話口で毎回言われるのは「マッチング面談を通過しました」という、選考目的を否定するための言葉。選考のステップを進んでいるのか不安になってリクルーターに尋ねると「書類を出せば通るから大丈夫」と言われ、8月に入ってからの最終面接で内定した。
リクルートキャリア就職みらい研究所の岡崎仁美所長は「今年は大手企業も人員の充足率が低く、来年に採用を持ち越している企業も多い」と語る。
一方、後ろ倒しの影響を受けなかったのは、例年通りのスケジュールで「青田買い」できた経団連非加盟の外資系企業やIT業界に多いメガベンチャーだ。こうした企業には、早くから企業研究に取り組むような意識の高い学生が集まる。3年生の夏には採用を前提としたインターンシップに参加し、翌年の1月から2月には内定が出ることが多いため、経団連企業の選考解禁日まで約半年も空いてしまう。
「外資を受ける学生は総合商社との併願が多い。ハイサラリー、ハイステータスで共通していますから。だから『みんなどこ行くんだろう』と内定者同士でも話していましたが、結局、10月1日の内定式には皆、うち(外資系企業)の内定式にいましたね」
外資系コンサルティングファームに内定した青山学院大学の林大介さん(仮名)は振り返る。名のある企業に内定をもらえばモチベーションが維持できなくなるのも頷ける。もともとは商社志望の林さんも「やっぱり早めに内定を貰うとだらけた」という。
「3年生の夏からインターンを始めているので他の内定者も疲労困憊していました。結局入社した会社を見ると経団連以外の企業だったので『あいつも結局あの後は本気になれなかったんだな』って分かっちゃいますね」
前出の岡崎所長は、来年は中小企業にとって、さらに厳しい年になると予測する。