ザ・ブロードは、慈善家(実業家)のエリ&エディス・ブロード夫妻がロサンゼルス・ダウンタウンに総工費1億4000万ドルを投じて設立したモダンなミュージアムだ。グランド・オープンは2015年9月20日、入場無料で一般公開中だ。現在はザ・ブロードに収蔵されている約2000点の作品の中から、ブロード・コレクションを包括的かつ年代順に鑑賞できるように、約60人のアーティストによる250点の作品が展示されている。周辺にはMOCA(ロサンゼルス現代美術館)、ディズニー・コンサート・ホール、ミュージック・センターなどが隣接し、このエリアは新たなダウンタウンのランドマークとなるだろう。
アメリカンドリームを体現した人生
エリ・ブロードは1933年にニューヨークのブロンクスで生まれた。6歳の時デトロイトに引っ越し、1954年にミシガン州立大学を卒業している。20歳11カ月の時に公認会計士の資格を取得し、これは当時としては全米最年少記録である。1957年に住宅建設会社を創業し、この業種としては初となるニューヨーク証券取引所への上場を果たしている。1970年代には保険業界に進出し、1999年に所有していた保険会社を業界最大手のAIGに売却して財を成した。
その後、妻エディス(エリが21歳の時に結婚)とともにブロード財団を設立すると、全米の大学に1000億円を超える莫大な寄付を行う。
すでに世界有数の美術品コレクターとして知られていた夫妻は、毎年多数の美術作品を購入し、世界中の美術館や大学へ作品を寄贈している。ザ・ブロードはこのような夫妻の慈善家としての活動の集大成でもあるのだ。
ザ・ブロードは最上階の3階がメイン・ギャラリーになっており、約3250平方メートルの展示スペースには柱が1本もない。
まずは、1950年代後半から1990年代のポップアートを代表するジャスパー・ジョーンズ、アンディ・ウォーホール、ロイ・リキテンスタインなどの作品が出迎えてくれる。続いて進むと、ウォーホールとの共同作業でも知られるジャン=ミシェル・バスキアはじめ、シンディー・シャーマン、ジェフ・クーンズたちの素晴らしいコレクションに目を奪われる。ニューヨークのソーホーやイースト・ビレッジで生まれた斬新な切り口の作品群は現在でも十分に新鮮だ。