World Energy Watch

2016年1月3日

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 低迷する原油価格は様々な影響を与えるが、植物由来のバイオ燃料が相対的な競争力を失うことは気候変動対策に影響を及ぼす。かつて石油は発電用などの燃料として使用されることも多かったが、オイルショック以降、天然ガスと石炭にその用途は代替され、いまの主な用途は輸送用と石油化学の原料だ。輸送部門での石油の使用とCO2の発生を減少させる手段がバイオディーゼル、バイオエタノールだ。バイオ燃料については食料との競合の指摘があり一時ほどの勢いはないが、依然CO2削減の有力な手段の一つだ。原油価格の低迷は、バイオ燃料の将来に影を落とすことになる。

 原油価格の下落は、相対的に電気自動車の競争力を奪うが、一方バイオ燃料の供給が不透明になることにより、気候変動対策から電気自動車への需要を喚起するかもしれない。

ビジネスチャンスを見極める

 日本企業は失われた20年間で、国際競争力を失ったように思える。経済協力開発機構(OECD)統計では、2005年から2012年の対国内総生産(GDP)の研究開発投資の成長率は、主要国中最下位まで日本は沈んだ。表の通り、1位の韓国10.3%に対し、日本は0.6%だ。

 いま、日本企業は研究開発投資増強に動いているが、費用対効果を考え投資を行う必要がある。太陽光発電技術に関する特許を調査したレポートによると、特許保有数上位15社のうち日本企業が11社(あとは韓国3社、中国1社)を占めているが、いま市場を席巻しているのは中国企業製の設備だ。日本企業は特許料収入を得ているかもしれないが、いま必要なのは収益と雇用拡大に結び付く研究開発だ。

 エネルギー環境分野での大きな流れから、今後の有望なビジネスが浮かび上がってくる。まず、再エネの安定化、蓄電技術だ。この分野は米国、ドイツ政府なども力を入れており競争も厳しい。だが、将来再エネによる世界の発電比率が50%を超えるのであれば、巨大な市場になる。かつて日本企業は蓄電池では大きな世界シェアを持っていた。力はある筈だ。

 気候変動対策に原子力は欠かせない。2度未満に気温上昇を抑制する努力がなされるならば、大きな成長が期待できる分野だ。中国、インドを初め多くの新興国が、今後原子力発電に力を入れることになる。アレバ、ウエスティングハウスに学んでいる中国がライバルとして登場しているが、東芝/ウエスティングハウス、日立/GEは技術的に優位に立っているはずだ。

 石炭火力設備は、米国、多くの欧州諸国が途上国での新設に否定的な立場を取っているが、多くの途上国は安全保障上、経済性の面から石炭への依存を続けるだろう。そうであれば、中韓企業と競争し、エネルギー効率の高い設備を競争力のある価格で提供する必要がある。効率のよい天然ガス火力設備の提供では米独企業との競争になる。

 米国は、ハイブリッドよりも電気自動車に力を入れている。米国メーカーがハイブリッドでは競争できないからではないかと疑いたくもなるが、原油価格の下落は電気自動車の需要に影響を与えることになる。燃費の向上にもさらなる力を入れることも必要だ。省エネ住宅、ビルもこれから大きな市場を中国、インドを中心にした途上国で作り出すことになる。

 気候変動問題を中心に、エネルギー・環境政策はさらに変わっていく。ビル・ゲイツが主張する通り、原子力、再エネ、省エネ住宅、エネルギー効率向上、全ての分野でイノベーションが必要だ。事業を通しエネルギー・環境問題の解決に貢献することが日本企業に最も求められている時代だ。


  
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