2024年4月19日(金)

WEDGE REPORT

2016年1月16日

 実はドローン業界にはこうした「大げさな約束」を掲げて消費者を失望させる企業が非常に多い。まだ産業として生まれたばかりということもあり、開発側が投資を募るために実現していない機能をアピールするケースが多い。

 今回のCESでも「人の後をジェスチャーのみで追跡するドローン」というものも発表されたが、これも実際にはまだ実現できていない技術だ。人の後を追跡できるドローンがあれば、例えばスポーツ、アドベンチャーなど、様々なシーンで思い通りの映像撮影などが可能だ。しかし、フォーブス誌のレポートによると、英国のトーキン・グループという企業がキックスターターでこうしたドローンの映像を公開、世界中から360万ドルのマイクロファンディングを集めたが、実際のドローンは制作されず、1万2000人に投資額も返還されていない。

嘘はマイナス効果を高めるだけ

 それでも、EHangの手法はCESのような舞台でデビューする無名の企業としては「あまりにも杜撰」との批判を浴びている。映像がやらせとわかった瞬間に、同社に投資しようとする企業は皆無となるだろうし、同社の信頼性にも大きく傷がついた。人を乗せたドローンの自社開発、という壮大なプロジェクトだけに、発表の場での嘘はそれだけマイナス効果を高める。

 UA開発の時代から、「いつか人を乗せられる自動運転で電力を使った飛行機の開発」は夢でもあった。世界には少数のEA (Electric Aircraft)が現実に存在するが、自動運転を標榜するものは皆無だ。EHang社が零細企業ながらこれにチャレンジした姿勢は評価できるが、やらせ映像によって却って「自動運転で人が乗れるドローン」と現実の大きな隔たりを露呈する結果となった。

 まだ若い業界であるドローンの今後の適正な成長のためにも、「大げさすぎる約束」を提示する企業のモラルが問われるべきだろう。

  
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