政府が国有地とする土地は国立公園のほか、農地、山林、鉱山など多岐にわたる。環境保護が目的だが、バンディ一味が主張する「政府が山林を明け渡せば地方の木材業が潤う」といった意見は以前からある。実際にバンディ一味に同調する動きもあるが、サックリング氏は「賛同勢力の一部は企業の支援を受け、国有地払い下げで利益を得るグループで、騒動が大きくなり連邦政府が国有地明け渡しを決定すれば『環境問題にとって最大の危機』が訪れる」と指摘する。
客観的に見ればそのような壮大な目論見というよりもバンディの父親のような私怨に基づく行為、と見れなくもない。きっかけとなったハモンド裁判にしても、放火が犯罪であるのは明白で、焦点となるのは「連邦政府の土地への放火は懲役5年」という条文の正当性のみだ。
セックス用玩具の差し入れを要求
バンディ一味にしても、ヒーロー気取りだったのが地元の共感も得られず、振り上げた拳の下ろしどころに苦慮しているのは明らかだ。主張は次から次へと変わり、占拠終了の条件も当初は保護センターのある「ハーネイ郡の住民が出て行け、というなら出て行く」だったものが、地元住民との会合で「出て行け」と言われるとあっさり撤回した。「食べ物、暖かい衣服、セックス用玩具の差し入れを」という意味のわからない主張もあり、サックリング氏の言う「道化集団」という見方が米国では広がっている。
数年前の「99%デモ」と言われたウォールストリート占拠などとは違い、全国に広がる政治的インパクトもなければ普遍的主張もない。一体この騒動、どんな決着を迎えるのだろうか。
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