今後の建設コストの平均を5000ドルと考えると、原子力発電設備だけで2040年までに2兆5000億ドル(300兆円)の巨額な投資額が必要とされる。再エネ設備も同様に巨額の投資を必要とするが、常に発電できない再エネ設備は需要家のもとに安定的に電気を送るために、発電設備以外に、例えば揚水発電、蓄電池などの余った時の電気を貯め、不足する時に使う設備など安定化の費用が必要になる。
その費用はシステムコストと呼ばれるが、IEAは太陽光発電設備のシェアが10%と30%に達した時の発電量1kWh当たりのシステムコストを、6カ国で試算している。その結果は表-5の通りだ。再エネ導入にはこれらの費用、すなわち設備投資も必要とされるということだ。
国連事務総長も気候変動対策の投資獲得に乗り出した
1月27日に国連機関、環境関連ビジネスへの投資を推進しているNGO・Ceresなどがニューヨークにおいて開催した投資家サミットには、保有資産総額22兆ドル以上とされる500以上の機関投資家が集まったが、その席上潘基文国連事務総長はCOP21の結果を受け、気候変動対策のためにクリーンエネルギー、インフラへの投資額を2020年までに2倍にするように訴えた。
IEAは、2015年のクリーンエネルギー設備、技術、研究開発への投資実績額を3020億ユーロ(約40兆円)と見ているが、2030年までに15兆ユーロ(約2000兆円)の投資が必要になると予測している。その中には上述の原子力関連の投資も含まれるのだろうが、やはり大きいのは再エネ関連の投資額だ。
Ceresとブルームバーグ・ニューエナージー・ファイナンス(BNEF)の分析によると、2040年までに民間部門が6兆9000億ドル(約800兆円)の投資を、化石燃料を代替する太陽光などの再エネ設備に対し行なう道筋が既についているとのことだ。ただし、この見通しの前提は再エネ導入に関する政府の支援制度が存在することだ。
2度目標を達成するためには、さらに5兆2000億ドル(約600兆円)の再エネへの投資が必要になるとの分析結果が示されている。再エネ部門だけで、今後25年間で12兆ドルを超える投資が必要となる。BNEFは年平均4840億ドル(57兆円)の投資が再エネ部門に必要と計算している。