2025年4月9日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年3月6日

 元メキシコ外相のカスタニェーダが、Foreign Affairs誌(電子版)に2月2日付で掲載された論説‘American Leadership Is Good for the Global South’で、今後の国際関係において、「力が正義の時代」を迎えるが、このような時代であるからこそ国際法や条約が尊重されることが、途上国の利益になるとして、グローバル・サウスがとるべき具体的行動に示唆を与えている。

(1xpert/Alexander Sikov/gettyimages)

 トランプ大統領の再任は、ひとつの時代の終わりとして受け止められている。第二次世界大戦後に始まり、冷戦終結後に世界中に広まった、リベラルな国際秩序と呼ばれる米国主導の秩序は終わった。これからは、「国益」が国際関係を支配し、「取引」がゲームの名称となり、「力が正義」となる。

 グローバル・サウスは、新たな国際秩序を模索するのではなく、現在の国際秩序を機能させるよう努力すべきである。国際条約を守り、強化することは、グローバル・サウスの利益となる。現在の国際秩序は、より大きな米国のコミットメントを必要としている。

 法によって規制・組織化された世界は、すべての人々、特に最も裕福な人々によって尊重されれば、貧しい国々にとって有利である。国際法は、しばしば貧困国に有利に働く。

 米国主導の秩序に背を向け中国を支持しても、中国の台頭を助長するだけで、国際法を守ることにはならない。それどころか、世界で最も成功した法体系が着実に侵食され、グローバル・サウスは、より危険な「ジャングルの法則」にさらされることになろう。

 米国が、第二次世界大戦後に自らが築いた秩序から後退していることは明白であり、この動きはトランプ政権下で加速するだろう。しかし、米国はトランプ再選以前から、国連や他の国際機関への関与を減らしてきた歴史を持つ。

 米議会は、いくつかの理由から条約の批准に抵抗してきた。国家主権を損なう懸念、既存の国内法との重複懸念などである。このような条約への消極的姿勢が、信頼できる国際秩序の構築を妨げてきた。

 グローバル・サウスが米国に圧力をかけ、ルールに基づく秩序を守るよう米国を促す建設的役割を果たすことはできる。グローバル・サウスは、米国主導の秩序そのものを守るよう説得すべく、ロビー活動を行うべきである。

 中国、インド、湾岸諸国、ヨーロッパの大国は、自国の利益を促進するために、ロビイストや法律事務所を雇っている。ロビー活動は、国際協定を批准するよう米国を説得することにも及ぶ。


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